文化や政治などが複雑に関わり合う歴史の断面から地域を捉える
20 世紀以降のイギリス地域研究が私の専門です。地域研究(areastudies)とは、伝統的な学問領域の枠を超えた広い視点から地域をとらえ考察する学問です。たとえるなら、地域を特定の時代で横に切った断面をつぶさに観察するイメージで、そこには文化や政治、経済、思想といった多様な要素がダイナミックにもつれ合って存在します。
例として、1990年代のイギリスでは、80年代サッチャー政権の重圧から解放された若者たちによって、音楽、映画、アート、服飾業界を巻き込む一大社会現象「クール・ブリタニア」が起こりました。18年間続いた保守党政権を破って発足した労働党のブレア政権は、国家広報戦略にこの「クール・ブリタニア」を利用し、クールなイギリス文化が世界に喧伝されたのです。時として政治や外交のツールとしても戦略的に活用されてきた、文化の違った側面が見えてくるでしょう。特定の事象にだけ注目するのではなく、それを取り巻く当時の社会情勢や人々の価値観、歴史的背景なども含めて広く考察することで、新たな視点を得て事象への本質的な理解を深めることができます。
文化構想学部では地域研究のほかにも、メディア研究、ジェンダー、異文化コミュニケーション論など、領域横断的なアプローチから人間や社会について考える学問を扱っています。大学で何をしたいのかがまだ明確でない人にとっても、アンテナを多方面に張りながら、打ち込めるものを見つけやすい学部といえます。既存の学問の区分や固定観念にとらわれず、大学という場で新しい知にチャレンジしたい人はぜひ門を叩いてください。