「社会とは何か」を問いながら格差や分断の問題を多角的に追究

人は、はじめから社会の一員として人生をスタートするわけではありません。何も知らない状態で生まれ、歳月をかけて人との関係の結び方や集団内での振る舞い方などを一つひとつ身につけ、社会というものの中に入っていきます。一方で、社会もまた、人々をネットワークの中に取り込んでいくことで、変化し存続することが可能になります。こうした人と社会の相互作用を考えるのが社会学であり、その中でも私は、社会を「教育」や「共生」の側面から研究することを専門としています。現代社会が抱える格差や分断、差別といったさまざまな問題について、「そもそも社会とは何か」という根源的な問いを解き明かしながら、諸問題への手当ての方法を見いだしていくことを目指しています。
高校生の皆さんもSDGs の学習などを通して「多様性」や「共生社会」という言葉に触れていると思いますが、「多様性や共生は大切だ」というところで思考を止めてはいないでしょうか。共生社会を目指しているはずの現代の日本で今なお、外国人や障がいを持つ人など立場の弱い人々が生きづらい状況にあるのはなぜか。問題が生じる構造とは何なのか。現状を徹底的に分析する社会学の学びを通して考察を深めてほしいと思います。早稲田には社会学を学べる学部・学科がいくつかあります。その中で文学部社会学コースの特色は、歴史や文学、哲学などを通して、人間のあり方そのものについて学びを深めながら、社会の本質に迫っていける点です。自分とは異なる立場の人の視点に立って考える想像力や、他者を理解しようと努める思考・姿勢も、社会学の学びから得られる財産といえます。