法の知識を拠り所に、自由や権利を尊重し合う生き方を示せる人に
車の両輪の関係にある実体法と手続法
法律には大きく分けて「実体法」と「手続法」があります。実体法とは、権利や義務の発生、変更、消滅などについて規定された法律で、皆さんも聞き覚えがあるであろう民法や刑法などがこれにあたります。これらの実体法は、単独では完全に機能しません。紛争の当事者が互いに「実体法上の権利がある」と主張し衝突した際に、どちらの権利を認めるのかという判断や手続を定めた法律である手続法が必要になります。私が専門とする民事訴訟法はこうした手続法の一つです。名前の響きから難しそうで縁遠いものと感じるかもしれませんが、そうとは限りません。例えばアルバイト先で賃金を支払ってもらえない、あるいは賃貸物件の退去時に敷金を返してもらえないといった際に利用できる民事訴訟の一種に少額訴訟手続があり、この手続を使って実際に未払いの賃金を勝ち取った大学生の事例もあります。このように手続法は、実体法が定める権利をどう保護し実行するのかを規律するものであり、片方が欠けては成り立たない車の両輪の関係とも言えます。
法曹を憧れではなく具体的な目標として捉えやすい環境
ゼミでは近年注目された判例などを題材に、過去の判例や学説を参照しながら多角的な分析・検討を行います。毎年秋には民事訴訟法を学ぶ全国15大学17ゼミによる合同ゼミナールもあり、普段とはまた違う緊張感のある白熱した議論が交わされます。膨大な資料を集め分析し、自らの思考を組み立て、人に分かりやすく伝えて理解を得るという一連の経験と、そこで身につく力は、どの分野に進んでも活きるはずです。一方で私自身は、早稲田大学がこれまでそうであったように、法曹界に優れた人材を多く送り出したいという強い思いもあります。身近な先輩たちの姿から、法律家になることを憧れではなく具体的な目標として早い段階から捉えやすいことも、早稲田の環境の魅力と言えるでしょう。法律は、ともすると行動を縛るものと思われがちですが、法規範のその中で、皆がより幸せに共生できる道を探ることも、法を学んだ者だから果たせる役割ではないでしょうか。互いに自由や権利を尊重し合う生き方の手本を示せる人であってほしいと思います。