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教員メッセージ

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海洋微生物が持つ多様な機能を社会に役立たせることを目指す

多くの可能性を秘めた微生物を知るための解析技術を開発海洋や土壌などの自然環境からヒトの腸内環境まで、あらゆるところに微生物は存在します。これら微生物の多くは実験室での培養が難しく、性質や特徴を詳細に知ることができずにいました。特に地球の7割を占める海には、陸上よりも多くの微生物が存在しますがほぼ手つかずの状態でした。見方を変えれば、海は多くの可能性を秘めた宝の山とも言えます。近年、環境中の微生物集団から直接ゲノムDNAを取り出して解析する研究が進んでいます。私たちの研究室ではこうした解析をより高精度で行うための技術開発に取り組み、単一の細胞内のゲノム情報を獲得できる新しい解析法を開発しました。この技術を活用し、未知の海洋微生物のゲノムデータから、微生物と環境や疾患との関係を解き明かすことを目指しています。また、2020年度からは国の大型プロジェクトで農業土壌の微生物機能解明の研究も開始しました。
研究に必要な技術の開発から自分で手掛ける姿勢は、工学出身という背景も関係しています。また、修士までの専門である農学の知識も現在の研究に活きています。これから大学で学ぶ皆さんも、やりたいことが決まっている人、まだ見当がつかない人などさまざまだと思いますが、大学に入ってからも興味関心は移り変わるものです。だからこそ視野を広げて幅広く学ぶことが重要であり、それができる環境が早稲田にはあります。常に周りをよく見て、世の中にどのような技術や潮流があり、自分が何を身につければ面白いことができそうなのか、考えてアクションすることを大切にしてください。

ゲノム研究で必須の情報解析技術をはじめ専門分野にとどまらない知識や視点が重要に
解析技術の発展に伴い、生物学を取り巻くデータも多種多様化しています。私たちの研究室では、海洋微生物のゲノム解析により得られるビッグデータと、多分野にわたる情報解析技術を統合する研究にも注力。微生物が持つ多様な機能を解明し、医療への応用や環境保全など、社会に役立たせることを目指しています。このように昨今は生命科学分野の研究者も、高速・大量化する分析データを適切に扱えるスキルを身につけることが不可欠になっています。加えてこれからは、研究成果が社会にどのような価値をもたらし、どのような新しい社会の創造につながるのか、といったところまで見通しながら研究に取り組む人が求められると感じます。自身の専門性をきちんと確立した上で、異なる専門分野の人たちと適切にコミュニケーションをとり協業するための俯瞰力を備えることもいっそう重要になるでしょう。ぜひそうした視点や力を意識的に磨きながら、研究に取り組んでほしいと思います。

企業同士の技術をつなぐ橋渡し役も
早稲田大学の産学連携拠点である121号館内に企業との共同ラボを複数構え、産学連携の取り組みにも力を入れています。その一つが、いずれも京都に本拠を置く分析機器メーカーの島津製作所と堀場製作所との協業プロジェクトで、成果の第1弾として2021年6月に新たな計測機器を発表しました。このように異なる企業同士の技術をつなぐ橋渡しをすることも、大学が果たせる役割だと考えています。

性差なく能力を発揮できる環境を整備
生命医科学科は女子学生比率が約4割と高く、教育・研究において性差の影響を感じる場面はありません。一方で、職業として研究者の道を選ぶ女性はまだ決して多くないのが現状ですが、社会は急速に変化しています。挑戦意欲を持って主体的に研究に取り組む人であれば、性別を問わず、卒業後の活躍の場はいくらでもあります。ぜひ安心して学問の扉を叩いてほしいと願っています。

Profile
竹山 春子 Takeyama Haruko
先進理工学部 生命医科学科 教授

東京農工大学農学部卒業、同大学院農学研究科修士課程修了、同大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。米国マイアミ大学海洋研究所研究員、東京農工大学工学部 助手・助教授・教授を経て、2007年より現職。専門は生命分子工学、遺伝子工学。研究開発プロジェクトが2020年、内閣府「ムーンショット型研究開発制度」に採択されている。

※掲載情報は2021年度内の取材当時のものです。

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