健康によい生活習慣を定着させる環境づくりまで考えたい
健康を損ねる「座りすぎ」の問題に取り組む
私の研究テーマは、「生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響」です。中でも現代人の「座りすぎ」が健康に悪影響を及ぼすことは世界各地の研究で明らかになっており、1日の中で座っている時間が長い人ほど、病気になるリスクが高くなると判明しています。さらに、たとえ毎週末ジムに通い運動をしているとしても、それ以外を長時間座ったままで過ごすと運動の効果を打ち消してしまい、依然として健康被害が生じるリスクは高くなります。特に日本人の座位時間は世界でも最長クラスと言われており、健康への対策としてできれば30分に1回、少なくとも1時間に1回は立って軽く体を動かす習慣をつけることなどが考えられます。そのためには個々の意識だけではなく、例えば長時間座り続けることが多いオフィスでは、立ったまま仕事ができるデスクを設けるなど、環境そのものを変える工夫が有効です。データの収集と分析を行い、そこから健康を維持・増進するための最適な生活様式を導き出して、多くの人に効果が波及する環境づくりを提案していきたいと考えています。
多様な業界とスポーツ科学の掛け合わせで新たな価値を剏造
座りすぎの問題が注目されたのは比較的最近で、座位時間も含めた生活全般と健康の関係を調べた調査のうち、日本人対象のものは多くありません。そこで私は学部の多くの教員とともに、卒業生の協力を得て、長期的に詳しい調査を行うWHS(WASEDA’S Health Study)を2014年に立ち上げました。精度の高い調査結果をもとに、日本人の健康長寿に役立つ研究が進み、健やかに過ごせる室内環境の整備といった健康ビジネスの創出を期待しています。ゼミでは、スポーツ科学の可能性を開拓することによって、社会に対して貢献するすべについても伝えています。こうした社会にインパクトを与える研究に取り組めるのも、当学部がスポーツを極めるアスリートからスポーツを科学的に分析する研究者タイプまで、幅広い人材を擁し、生理学から心理学、教育学といったあらゆる研究分野をもつ多様性に満ちているからです。学生には各自の得意分野とスポーツ科学を掛け合わせて、人口減少や地方創生をはじめさまざまな課題を抱える日本社会に貢献できる人になってほしいと思います。