企業経営での多様で複雑な関係に計量的にアプローチする
私たちの身の回りにある人やもの、組織などは、他の人同士、もの同士、組織同士と多様で複雑な関係を築いています。こうした関係は全体を誰かが制御しているのではなく、多様な要素がお互いにやり取りをして、新しいものが生まれたり、それがまた他の要素に影響を与えたりするため、簡単にはモデル化できない現象が起こります。そうした現象を扱うのが複雑系と呼ばれる学術体系で、とりわけ関係性に注目しているのが、ネットワーク科学という分野になります。なかでも、私の研究対象は組織経営・戦略です。経営にはさまざまな理論があり、実世界に当てはめるとうまくいかないこともありますが、どうやって新しい価値を生み出すのかといった課題に、計量的にアプローチして分析を行います。例えばイノベーション研究では、日々生まれてくる技術や知識がどんな動きをしているか、どんな組織や個人がどう関わっているかを分析し、どうすればイノベーションが継続的に生まれる社会をつくれるかという課題に取り組んでいます。
経営システム工学科は社会システム全般が対象となり、研究も学際的になるため、適用できる範囲が広い反面、専門性が薄いと感じる学生もいます。しかし、すべてのシステムや仕組みに共通して求められる安全性、安定性、効率性などを実現するための視点を持つこと自体が高い専門性といえます。最先端の学問だけでなく、伝統的な学問を基礎から学べるのも魅力だと思います。