人間と生態系の関わりを理解し環境と調和した社会の構築を探究
地球上のあらゆる生物は、生命活動などを通じて周辺の環境や他の生物種に対してさまざまな影響を及ぼします。生物が生態系の中で果たすこうした役割は「生態系機能」と呼ばれます。私の研究室では、鳥類や小型哺乳類をはじめとする野生動物の生態系機能の仕組みや、人間生活と生態系機能との関わりを解き明かしながら、生態系の繋がりを断ち切らない環境
調和型の社会を目指した研究に取り組んでいます。
研究活動の中心となるのが野外調査です。研究対象の野生動物を長期間にわたり観察し、生態や行動、生理に迫っていきます。その過程では、一見無関係に思われた要素の繋がりに気づいたり、人間生活との関わりが見えてきたりと多くの発見があります。海鳥を例にとると、カモメなどの海鳥は外洋で餌となる魚などを採取して陸上の巣に戻り、そこで糞を排出します。これにより生じる物質の循環は、陸上の生態系に強く影響するだけでなく、人が昆布などの海産物を生産する上でも重要な役割を果たしていることがわかってきました。フィールドで動物たちの過酷な命の営みを目の当たりにし、価値観や人生観を揺さぶられる学生も少なくありません。野生動物と真摯に向き合って得られる学びや体験は、一生涯の財産になると思います。一見関わりがないようで実は繋がっている、という面白さは人間科学部の学びにも通じます。人間を軸として学問領域の枠を超えて横断的に学ぶなかで、当初は関心を向けていなかった分野が、自身のテーマを究める上で重要だと気づくこともあるでしょう。そうした出会いの機会に満ちた文理融合の充実したカリキュラムも、人間科学部の魅力です。