国と国の間に生じる相互誤解の原因とその解決策を探る
国際関係学における最大のテーマは「なぜ戦争は起きるのか」「いかに平和を構築するか」の2点だと私は考えています。授業では核兵器保有の是非について話し合う機会を設けていますが、国籍も文化もさまざまに異なる学生が集う環境だからこそ意見は大きく分かれ、熱を帯びた議論が繰り広げられます。思いもしない視点や考えに触れ、異なる角度から問題への理解を深めることができるのも、国際教養学部ならではの学びの醍醐味と言えます。
ゼミで扱うテーマの一つに「国際関係で生じる相互誤解・誤認」があります。最近の例として、日本のメーカーが新製品の発表を予定していた日付が、85年前に日中戦争の発端となった事件の日と同じだったことから、中国国内で批判が巻き起こりました。メーカー側には何の意図もなかったにもかかわらずです。このように、相手の言動を自国の文化の尺度で解釈し、誤解(misunderstanding)や誤認(misperception)が生じてしまうケースが、日中関係に限らず実際に起きています。私自身も研究者として関心を寄せる問題であり、原因や対策について学生とさらに議論を深めたいと考えています。
また国際教養学部は、多文化共生の実践の場でもあり、1年間の海外留学を通して、異文化への理解と寛容さ、複眼的なものの見方が身につきます。それらは将来、多様な文化的背景を持つ人々と協働できる柔軟性や、俯瞰的にものごとを捉えて課題解決にあたる能力として、みなさん自身にとっても社会にとっても大切な財産となるはずです。