今ある問題だけに目を向けるのではなく、その問題のプロセスを知り未来を考察することが重要
現代社会に合った新しい学問を創造
私の専門分野はジェンダー史とアメリカ研究で、現在はアメリカ占領下の日本における性・生殖、結婚、家族をめぐる政策に注目しています。例えば戦後制定された優生保護法は、避妊や断種・不妊手術などに関わるものですが、アメリカの優生思想の影響があります。1996 年に優生思想の部分を削除して母体保護法に変わりましたが、社会の実情や意識はほとんど変わっていません。また、憲法改正や領土問題、あるいは「慰安婦」問題や女性労働問題など、現代の日本社会が抱える諸問題はアメリカの占領期に行われた諸改革に端を発するものが多いと考えています。ですから、学生には今クローズアップされている問題だけに目を向けるのではなく、その問題がいつ、どのようにして起きてきたのかというプロセスを知り、そこから未来を考察してほしいと考えています。
文化構想学部では、伝統的な学問領域の方法論にとらわれないアプローチをとり、問題やテーマを多面的に考察します。普段から社会に対する問題意識を持ち、その原因を探り、多様な学問を駆使した学際的な学びを通して現代社会にふさわしい新しい学問領域を創造していく。それが、文化構想学部の特長であり目的だと私は理解しています。
社会を批判的に見る目を養うことで多くのことに気づく
授業では学生同士のディスカッションを多く取り入れ、レスポンスペーパーに記入することで、その講義を受けたことで自分が何を学んだのか、何を新しく知ったのかを振り返ってもらうようにしています。演習では2 ~ 4 年生が一緒になりますが、上級生と下級生が協力し合うことが、学びの上での相乗効果を生み出していると感じられます。また、頭に浮かんだことは、書くことで整理されて論理的な思考となっていくことから、私は書く能力を養うことも重視しています。そして、自分の考えは言葉で相手にしっかりと伝える必要があります。そのためにも色々な人の考えを聞き、ジャンルに関わらずたくさんの本を読んで、多くの言葉に触れてほしい。そうした中で身についた論証能力は、みなさんが将来どのような仕事をする上でも、大変重要なものになります。
入学してきたみなさんには、今の社会を批判的に見る目を養ってほしいと思っています。ある問題に対して与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、原因を自ら探り、解決策を考えてください。そうした経験を積むことによって、みなさんが普通だと思っていたことが如何に普通でないのかに気づき、そこから新たなものが見えてくることが多くあるはずです。その瞬間に立ち合うことが、私たち教員にとっての大きな喜びになります。