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教員メッセージ

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国際社会の影響なしに生きることはできない現代。法的な観点を持って国内外の物事を多角的に捉える

国際社会における国際裁判の意義
グローバル化が進み、国と国との関係が密接かつ多様になっていくにつれて、国家間の紛争が起こる事情や背景も複雑化しています。そうした紛争を冷静に解決するための手段として、国際法に基づく国際裁判があります。私は国際裁判において、どういった手続きを経るのが望ましいか、どのような論理構成がとられるべきか、という観点から研究を進めています。

南シナ海をめぐる紛争について、フィリピンが中国を相手とした仲裁裁判で、2016 年に最終的な判断が出されたことは記憶に新しいことと思います。この仲裁裁判は、国連海洋法条約によって作られた裁判制度を利用したものです。この制度は、紛争の一方の当事者の判断で裁判を開始できる可能性を高くしています。ただし、その利用のためには、複雑な条件を満たす必要もあります。海洋進出を加速化させている中国という大国を相手としたこの裁判で、どのような判断が示されるかについては、世界が注目しました。仲裁裁判所はフィリピンの主張をほとんど認め、中国が南シナ海に対して主張してきた、「九段線」や「歴史的権利」に基づく権限を認めない判断を示しました。残念ながら中国はこの仲裁判断を拒否していますし、国際社会にはこのような場合に国際裁判所の判断を強制的に執行する制度がありません。しかし国際社会では“ 名誉”が非常に重視されます。この仲裁判断も中国の外交政策についての今後の意思決定に何かの影響を与える可能性があると考えています。

“ 法学部を卒業した”国際人に求められる資質とは
国際人として活躍したいと希望しているならば、法学部で学ぶ法律の専門知識や法的思考力は非常に有効だと思います。外国では、国際法や国際私法だけでなく、日本の法律についての知識を問われることも多く、判例や学説を含めた日本法の説明ができることは大きな意味を持ちます。また、その説明の際に、国際法の文脈で各国の国内法が持つ意味も認識できているとさらに良いのです。法律の勉強には各国の法制度や政治制度、そしてそれを支える歴史や文化の違いを理解するための多角的な視野を持つことも必要です。法律主専攻履修モデルと副専攻履修モデルにより構成される法学部のカリキュラムは、そうした人を育てるためのものです。

これから法学部を目指す高校生、受験生のみなさんには、読む力と書く力を大切にしてほしいですね。いくつもの判例や専門書を正確に読み解き、自分なりの考えを書き、まとめた上で発信することが求められる法学部での学びには必要不可欠だからです。大変に感じる受験勉強も、実はこうした“ 頭の体力”を身につけるのに適していると考えると、少し見方が変わってくるのではないでしょうか。

Profile
河野 真理子 Kawano Mariko
法学部 教授

※掲載情報は2016年度内の取材当時のものです。

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