社会が抱える問題の解決を総合的な視点から考えるための学び
社会科学のさまざまな前提を総合的に考察する
社会科学とは、経済学、社会学、人類学、政治学、法学、商学、心理学などの総称です。社会現象を解明し、社会問題を解決するためのさまざまな研究が行われています。いずれも人間や社会を対象とするので、研究者の価値観の影響が問題になりえます。私の専門である、社会科学の哲学では、社会科学のさまざまな前提を考察しています。そのためには、ものごとを多様な観点から検討することが必要です。例えば、人類学や国際関係論の研究に、女性器切除の慣習を扱ったものがあります。主にアフリカで行われている慣習ですが、アメリカに移民が増えてみると、アメリカ国内でも行われていたことが判明して社会問題になりました。宗教の教義に基づく慣習などが問題になることもありえます。日本にも多様な外国人が増えることで、考えもしなかった社会問題が生じる可能性があります。外国人とともに働き、暮らす社会で、これまでの常識では対応しきれない問題が生じたときにどう対処するのか、社会学、政治学、あるいは法学の問題として学際的に扱う必要がある時代になっています。
今学んでいる知識をアップデートできるようになる
大学では最先端の知識を学ぶことができます。しかし、今、最先端であっても5年後、10年後には古いものになります。大学で学んだことはいずれ陳腐化していくのです。それでは、学生が大学で学ぶ意味とは何でしょうか。それは、ものごとを考える視点は複数あることを知り、最新の情報を調べて活用できる力を身につけることです。そのためには、今現在の最先端の知識や技術と、これまでの歴史を知ることが不可欠です。大多数の学生が、大学卒業後は就職をします。そのとき企業からは「あなたは何ができますか?」と、ますます問われる時代になりました。4年間で、「これができます」と言えるものを身につけることが求められています。グローバル化していく社会に対応するためには語学力も必要です。大学の4年間は、ぜひ、徹底的に学ぶ時間にしてほしいと思っています。大学で得た知識をどう活かすかは、本人の創意工夫にかかっていますが、社会が抱えるさまざまな問題を解決するには、学びをとおして得た、知識をアップデートする力が必ず役に立つと思います。