アメリカ独自の文化を深く身になるように識り、私たちがどう生きるかを模索する
時代を変えた20世紀アメリカを経験する
私の研究の中心は、『白鯨』のハーマン・メルヴィル、明治期の日本に影響を与えたラルフ・ウォルドー・エマーソンなどが活躍し、「アメリカン・ルネサンス」とも呼ばれた19世紀のアメリカ文学です。加えて20世紀以降のアメリカの文化全般にも強い関心を持ち、 1960年代をテーマにした講義も行っています。現在の Black Lives Matterにつながる公民権運動、性的マイノリティーあるいは人種の問題を扱った小説、移民が奏でる世界各地の音楽をルーツに生まれた音楽など、アメリカ独自の文化から自らの血肉となる出会いを経験する。講義やゼミがそうした刺激になればと私は考えています。
私たちはどう生きるかを問う4年間
早稲田の文学部は、仕事ですぐに役立つノウハウやテレビで披露する雑学を効率よく拾う場とは異なります。ウェブ上にあふれるような無数の情報の粒に流されず、溺れず、自分なりの足がかりを作る機会を得る時間・場所だと思っています。これは「私は、私たちは、どう生きたらいいのか」を問うことであり、答えは一般論から導けず、人々が生きてきた具体例を多く知り、ときには頭が真っ白になるような経験を何とか乗り越え、自分の中から紡ぐほかありません。古今東西の文学作品を読むことは、作家が創った一種疑似的な現実を経験し、描かれたさまざまな具体例を自らの血肉に変えていく行為と言えます。