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卒業生のキャリアストーリー

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「求められる営業」目指す 成長と未熟さ、両方を実感

顧客の想像の上を行く相手への誠意も大事 午前10時から社内と、午前11時からはクライアントと。博報堂で営業を担当する山本亜侑やまもとあゆうさんの1日には、打ち合わせがひしめき合っている。時期にもよるというが、5本以上のミーティングも珍しくない。
新卒で営業に配属されて3年目。顧客とクリエイターの橋渡し役が主な仕事だが、進捗管理など制作現場の実務全般に関わる。
仕事をしていて最も難しいと感じるのは、「顧客とクリエイターの意見に相違が生じた時」だという。例えば、分かりやすさを優先したいと考える顧客と、分かりやすいだけでなく、数多くの広告の中でより多くの人の目に留まるクリエイティブ(制作物)を作りたい、というデザイナーのプロ意識がせめぎ合った時だ。営業は、デザイナーにお願いして顧客の要望をのんでもらうか、それとも顧客への説明や提案の仕方を工夫して、一定のデザインを認めてもらう努力をするか、判断しなければならない。
「私の場合、広告としての効果を高めるにはデザイナーのこだわりも不可欠だと顧客に丁寧に説明し、理解してもらおうとすることが多いです。顧客のニーズに沿うのは大前提ですが、制作者の尖った部分も生かし、顧客の想像の上を行くものを生み出したいんです」
スケジュールの作成も、営業の大事な仕事だ。かつて先輩から「スケジュールやメール、見積もりなどにも、営業としての創造性を発揮する余地があるんだよ」と教えられ、こうした業務に向き合う姿勢が変わったという。
「スケジュールを引く時は制作期間を十分に確保する一方、仮に遅れが生じてもカバーできるよう、ある程度のゆとりも持たせるのが理想的。そうすればクリエイターに気持ちよく仕事をしてもらえるし、顧客にも安心感を持ってもらえます」
しかし進捗管理にどれだけ気を配っても、避けられないトラブルはある。新人時代、山本さんが担当する制作物が世に出る直前、諸事情で使えなくなったことがあった。初めて大きなトラブルを経験し「期日に間に合わないかも」と慌てる山本さんに、先輩は「焦っても仕方がない。今できることをやろう」と助言。 それを聞いた山本さんは、関係者一人一人へ事情を説明して制作物の差し替えを依頼し、事態を乗り切った。
「ピンチに対する劇的な解決策など存在しない。順序立てて必要な段取りを踏んでいくしかないのだと、その時学びました。それからは何か起こると先輩の言葉を思い出し、あまり焦らなくなりました」
トラブルや遅れが生じた時、制作者に無理なお願いをすることもある。だからこそ普段から相手の事情に配慮し、信頼関係を築かなければいけない。
「こちらの誠意が伝わるか伝わらないかが、相手の作業に対するモチベーションを左右し、結果的に制作物のクオリティーにも反映される。それが分かってからは1本のメールを打つ時も、文章をよく考えるようになりました」 芸術作品と違って広告は役割を終えれば消えるが「経済を回すというアートにない力がある」と話す。「広告だからこそ多くの人の目に触れ、企業利益という形で経済にはね返る。そこに意味があると思います」 人の目の色を変えたい
自分にできる仕事を拾う
広告制作を通じて「ワクワク」や「驚き」を生み出し「人の目の色が変わる瞬間」をつくりたい、と思い続けてきた。実際に最近、そんな瞬間に立ち会える出来事があったという。
競合企業とのプレゼンテーションに向けて用意したいくつかの提案の中に、顧客のニーズを的確に捉えている、と思える案があった。
「個人的にも好きな案で採用されてほしいと思っていましたが、まさにその案を出した時、クライアントが『あっ』という顔をしたんです。『いい』と思ってもらえたことがすぐに分かったし、結果的にもこの案が採用されました」
ただこのプレゼンは、受注の懸かった重要案件であり、若手の山本さんはまだ「苦労できるほどの仕事は任されず、悔しさも味わいました」。普段の業務では、山本さんが方向性を決める局面も出てきているが、この案件では上司が初期の段階から参加し、広告会社側の意思決定を担った。山本さんは力不足を自覚しつつも、「すごくいいと思います!」といったポジティブな言葉で現場を盛り上げたり、制作物について、あえて業界に染まり切っていない「若手」の立場で意見を言ったりと「自分にできる仕事を拾う」ことに努めた。
「今は経験が少なくて、先輩や上司の生み出した成果を享受する部分が圧倒的に多い。でもいずれは私も『苦労を背負う』方に回りたいと思います」
日々の業務でもまだ、山本さんの提案に対して先輩から「そこは本質ではないのでは?」という指摘が入り、それまで見えていなかった視点に気付かされることがある。そんな時、先輩たちのダイナミックな考え方に圧倒されると同時に「こうなりたいと思える人が身近にいるのは、ありがたい」とも感じるという。
また「早く力を身に付けたい」と、業務範囲を超えて顧客の事業戦略立案に関わるミーティングに参加したり、上司に頼んで事業計画の案を書かせてもらったりもしている。
「案が採用されることはなくても、フィードバックをもらえるだけで、とても勉強になります」 ミーティングの多くはオンラインで行われ、オフィスで対応できるが、ほかの業務も待ってはくれない。会議の内容や気付いたことなどを文書に残しつつ、時には会議を中座してかかってきた電話に対応し、自分からも業務連絡を入れる。次々と発生する仕事に、優先順位を付けながら対応する様子はまさに「フル稼働」。 クリエイターはかっこいい
でも私は営業がいい
山本さんは「小学生の頃から、テレビ番組よりも合間のCMを見るのが好きだった」と振り返るほど、根っからの広告好きだ。小学校高学年の時、電車のドアに貼られた化粧品の小さなステッカー広告を見たことが、この道を選ぶ大きなきっかけになった。
「ステッカーの中に小さな鏡が仕込んであり『あなたのまつげ、下がってない?』といった内容のコピーが添えられていた。見た人はつい、鏡をのぞき込んでしまいますよね。広告って行動を変えられるんだ、と思いました」
学生時代は、クリエイターをやってみたい気持ちもあったが「ゼロから1」を創り出すより、「1」を「10」にする仕掛けをつくる方が向いていると考え、営業を志望した。自分で選んだ道ではあるが、入社当初は「クリエイターの道を諦めた、というネガティブな思いも多少ありました」。
しかし実際にクリエイターと営業、両方の仕事を知ると、顧客の事業戦略立案などに関われると同時に、制作に対してもアイデアを出せる営業の仕事こそ、天職だと思うようになったという。
「クリエイターはかっこいいとは思いますが、私自身は営業としてキャリアを積みたい。関わりのあったクリエイターから『あの人と、また一緒に仕事をしたい』と望んでもらえるようになることが、今の目標です」
最近は「ある程度自分の頭で考えて、上司や顧客と対話ができるようになり、仕事の面白さも増してきました」と話す山本さん。一方でタスクの量が増え、入社1年目の後輩の指導も任されて「プレッシャーも感じています」。
つい先日、その後輩社員に「メールでは、デザイナーさんに配慮して伝え方を工夫した方が、その後の関係性がよくなるよ」とアドバイスした。「メールでも創造性を発揮できる」と教えられた側から、教える側に回ってみると「先輩たちは、新人の私に根気よく付き合ってくれていたんだな」と苦笑する。
入社してもう3年、まだ3年。
「成長したと思える時もありますが、営業として自分の『やりたいこと』を実現できるようになるには、まだまだ能力と経験が必要だとも感じています」 休日に同僚を招いてホームパーティーを開き、たわいのない話で盛り上がった。中の1人は新人時代、トレーナーとして指導してくれた先輩で「社会人としての振る舞い方を、一から教えてもらいました」。

Profile
山本 亜侑 Yamamoto Ayu
広告会社営業
卒業後3年目
2023年 商学部卒業

※掲載情報は2026年度内の取材当時のものです。

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