学部時代にフィールド調査にやりがいを見出す。埋もれがちな炭鉱の技術に光を当て、炭鉱労働を捉え直す
学部在学中はサークル活動に熱中していましたが、大学院に進む転機になったのが東日本大震災です。ゼミの指導を受けていた嶋﨑尚子先生の紹介で、浦野正樹先生の研究室による福島県いわき市でのフィールド調査に参加し、こうした研究に私も関わりたいと思いました。修士課程に進学して浦野先生の指導を受けながら、嶋﨑ゼミにもTA として参加しました。その過程で嶋﨑先生の専門の炭鉱研究に関心を持ち、炭鉱をテーマに修士論文を書き上げて博士課程に進みました。現在は国内で唯一、営業採炭を続ける釧路コールマインの前身である太平洋炭砿の技術史などの研究をしています。日本の石炭産業の終焉から15 年以上が経過し、関係者が所有する資料も年月とともに失われる恐れがあります。そうした資料を掘り起こし、実際に現場作業に関わった方々の話を記録にとどめ、そこでの試行錯誤の過程を解明していくことにやりがいを感じています。
早稲田の理工学部にはかつて鉱山学科があり、図書館には関連の蔵書が充実し、炭鉱関係者にOB が多いことも研究の助けとなっています。現在取り組んでいる共同研究では歴史を振り返るだけでなく、現在も石炭産業が盛んなベトナム、中国、インドネシアへの技術移転にも着目しています。日本では70 年代に炭鉱技術は世界最高の水準に達していますが、そこで培われたものが今後どのようにアジア各国へと移転されていくのかも含めて研究を進めていく考えです。