終末期医療、臓器移植、代理出産、クローン技術・・・発展し続ける医療と社会とを結ぶ「医療と法」の研究室

人の生命の始まりと終わりをどう定義すべきか、生命の選別は許されるか。現代の医学・医療は、われわれの生命・身体のあり方や社会のあり方そのものに関わる多くの問題を引き起こしている。このゼミでは、そうした問題に法はどう対応しているか、あるいはどう対応すべきかについて研究を行う。
研究室DATA
横野 恵 先生
横野ゼミ(社会科学部 法学分野)
所在地:早稲田キャンパス14号館
Work
医療関連の問題を扱ったドキュメンタリーを制作
脳死を人の死とする改正臓器移植法が成立したという報道を覚えている人も多いでしょう。このような医療技術と生命倫理の間で起こる問題、また、健康保険などの制度と医療費のように、医療に関して社会の中で発生する問題に対して、法律の側面からとらえ、ルールを決めていかねばなりません。そんな「医療と法」をテーマにする横野ゼミでは、今年から新しい試みとして2チームに分かれてグループ研究を行っています。
まずはドキュメンタリービデオの制作チーム。5人のメンバーで話し合い、テーマを「医療用大麻」に決定。多くの国で認められている医療目的での大麻の使用が、日本では法律で禁じられている問題を取り上げることになりました。「日本で違法なのは、濫用の恐れがあるからというのが主な理由。少し前に早稲田の学生が大麻で逮捕される事件が起こったりして、学内でも関心が高まっていたのでテーマにしました」(3年・加藤 輝純さん)。
「現在裁判中の人を主人公に筋書きを作り、取材して肉付けしていきますが、取材させてもらえなかったり、コメントがうまく引き出せなかったり、苦労しています。でも医療の問題は現場にいくと実感を持ちやすいですし、座って勉強するのとは違って、自分で計画を立ててカメラを持って動くのはやりがいがありますよ!」
(3年・芹澤 雅人さん)

3年・加藤 輝純さん
「普通の人」はいかにして「医師」になっていくのか?
もう一方は、医学部の学生へのインタビューを行い、冊子にまとめるチームです。「小児科や産科を中心に、日本の医療が崩壊しているというニュースをよく耳にします。そんな状況で、普通の人が医師になるまでの間の存在、つまり医学部の学生はどんなことを考えているのだろう?という視点で取材をしています」(3年・金澤 真人さん)。ツテをたどって、医学部のある大学にアポを取り、学生がどんな医師になりたいと考えているのか、生の声を集めます。「みんな医療機関は利用するのに、労働現場の過酷さなど、その実態は意外に知らないもの。医者より一歩普通の人に近い、医学部の学生の視点を探りたいです」。
科学技術に法律が追いついていない現状に興味があってこのゼミを志望したという宮崎沙也佳さん(3年)は、グループ研究は「チームの中でもみんないろんな意見を持っているので、まとめるのが大変です」と語ります。「せっかく取材に応じてくれるのにありきたりな質問ではつまらないので、質問内容の準備に力を入れています」とのこと。「一般の人にも、技術と法律の乖離について考えてほしい」という気持ちで、勉強をしているそうです。成果をまとめた冊子は、製本して来年のゼミの新歓で配る予定でがんばっています。
社会科学部の魅力の一つは、分野と分野を結ぶ研究ができるという点。横野ゼミでは、このおもしろさを存分に追究できますよ。

3年・宮崎 沙也佳さん

まだ始まって4年目の若いゼミ。「先生も若くて、自分たちと年が近いので打ち解けて話しやすいです。もちろん厳しいときは厳しいですけど!(笑)」
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このゼミを目指すキミに先生おすすめの本
わたしのなかのあなた
ジョディ・ピコー著(早川書房)
映画の原作にもなった読みやすい物語ですが、医事法・生命倫理に関わるさまざまな問題を考えさせてくれます。