環境エネルギー問題と あなたが生きていることの関係を問う 友成研究室

法学部、国際学部、農学部、工学部など、文系からも理系からも、そして他大学からも、さまざまな学生が集まっています。環境エネルギー分野に興味があれば、学部で何を専攻していたかに関係なく、自分の関心のあるテーマで研究を深めていくことができます。これまでのゼミ生の研究内容も、環境教育やジャーナリズム、伝統芸能、地方自治体、中国進出日系企業など環境エネルギーをベースにしながら、その対象は多岐にわたっています。
研究室DATA
友成 真一 教授
(大学院 環境エネルギー研究科)
所在地:本庄キャンパス
Work
貯水槽、絵本、絆。すべてが研究テーマになる
環境エネルギーといえば、今の日本で、いや地球上で最も重要なテーマのひとつです。地球温暖化、CO2排出量、夏の節電、生物多様性、原発ゼロ...。思いつくキーワードを上げていくと、大きな話から、小さめの身近な話まで限りなくあげられます。では、このゼミではどのようなテーマを研究しているのでしょうか?
「環境エネルギーに関係していることなら何を研究テーマにしてもかまいません。このゼミで求めていることは、何が問題なのか、自分自身で問題設定をして、それを解いていくことです」と友成先生。
ゼミ生に研究内容を聞いてみると、確かに一人ひとりテーマはまったくバラバラです。たとえば、石井万里奈さん(修士1年)のテーマは「絵本」。「環境問題をとりあげた絵本が子どもたちにどんな影響を与えるのかを研究したいと考えています」。環境エネルギーのゼミというと、技術開発や制度、政策の研究というイメージを持った人も多いかもしれませんが、このようなテーマ設定が可能なのですね。学部では日本文学を勉強してきたという石井さんならではの視点も取り入れながら、環境エネルギー分野での問いが立ち上げられています。
倉本 太一さん(修士2年)の研究は「環境コミュニティビジネスによる持続可能な地域コミュニティ構築に関する研究」。特に、長野県飯田市での取り組みに注目している倉本さんは、この夏も現地に行ってきたとのこと。「飯田市では、日本では珍しい『市民出資』という形で太陽光発電設備を設置しています。たとえば幼稚園に設置された太陽光発電設備は、キャラクターが光って発電量を知らせてくれるので、子どもたちは生活の中で自然に環境問題に触れることができます。子どもたちに伝わるとその家族にも伝わって、大人の意識や行動も変わっていくんですよ」。
このような家族のつながりをはじめ、地域住民のつながりや個人個人の絆が、実は、環境コミュニティビジネスにとってかけがえのない要になるというのが、研究のテーマなのだそうです。「地域のつながりって、最初は、知り合いとの飲み会に参加するとかでいいんです。飯田市で、実際にそういう飲み会から始まったつながりがプロジェクトを動かしているということを感じました」。飲みに行って人と出会うことから、地域の環境問題を解決する一歩って始まるんですか!
他にも、貯水槽や廃棄物処理について取り上げている人、学校教育と環境の関わりを研究している人など、先生のおっしゃるとおりテーマは幅広く、それぞれが興味のある分野を深めている様子がわかりました。

この日は、9月入学で中国からやってきた留学生の歓迎会も行われていました。「ようこそ」「ガンベイ!」。日本語と中国語で始まった会は、さらに英語も交えた会話で盛り上がっていました。

研究内容をディスカッションした後のホワイトボード。しばらく残されていたこのボードを目にしたゼミ生から、質問が投げかけられる光景を目にしました。常に研究のことが頭の片隅にある、ふとした瞬間に「研究モード」に入ることができる、大学院生の生活が垣間見えました。
問い続けることで、問題の本質へ
研究は個人個人で先生と相談しながら進めていくとのことですが、普段のゼミはというと...取材にうかがった日、先生からゼミ生に説明がありました。「はい、この推薦図書リストの中から読みたい本を選んで、担当した本の内容をレジュメにして発表してください」と。
実はこの図書の内容が驚きなのです。環境エネルギー関連の本は一切なく、『夜と霧』『ふしぎなキリスト教』『愛するということ』などなど(リスト参照)。これは一体どういうわけなのでしょうか?
「大学院にはいろいろな授業があるので専門的なことはそこで学べます。このゼミの場では、もっと本質的なことに触れていきたいと考えているんです。人生とは何か、人間とは何かが少しでもわかるといいですね。究極は、自分が生きていることの意味をつかんでほしいと思っているんです」。
環境エネルギーについての研究もさることながら、ここは「人生の学び場」という位置づけなのですか?
「そうです。そうでないと、2年間も費やして大学院に来る意味がないでしょう(笑)。それに、環境エネルギーって何なんだ、と考えていくと、すべて人間の行動に集約できるんですね。人が何を考えてどう行動するかということを考えることなしには環境エネルギー問題は解決できない。そうしないと、問題の本質から離れて、全く表層的な話に終わってしまいますよ」。先生のあたたかい表情とテンポのよい口調にどんどん引き込まれます。が、しかし、本質って...難しい問題ですよね。
「難しいですよ。話してわかるならいくらでも話しますが、やっぱり自分で気づかないと本当の理解にはならない。そのためには考え続けなくちゃいけないんです。自分で問い続けることが大切です」。そう、確かに先生は、最初にもおっしゃっていました。「このゼミで求めていることは、何が問題なのか、自分自身で問題設定をして、それを解いていくことです」と。そして、さらにもうひと言。「誰かが問題を設定してくれたらラクなんですよ。でも、それじゃあ、人生は解けないんです」。
環境エネルギーのゼミに来たら、お話が人生の話にまで発展してしまいました! でも、環境エネルギー問題を解決するためには、人が生きることについて考えることが不可欠。そして、人が生きていくうえでぶつかる問題を解決したいと思うとき、環境エネルギー問題を深く研究していくことも確実な一助となる。今後の人生の自信となる...。
それって一体どういうこと? という人は、ぜひ一度、友成ゼミのトビラをノックして、先生とお話してみてください。きっと、思いがけない新しいトビラも開くはず! そんな不思議だけど、とっても強いパワーを感じる友成ゼミでした。

研究室の片隅に布団! 研究が佳境を迎えると泊り込むこともあるそうです。自分の研究は、当然、自分で進行を管理します。

先生の著書『問題は「タコつぼ」ではなく、「タコ」だった』(Discover21)。自分の夢とは? 夢をかなえるって? 人生の意味は? 日々わき起こる疑問や不安に寄り添ってくれる1冊。身の回りのさまざまな問題の構造が一気にクリアになって、すっきり! 一歩を踏み出す力になります。
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