経済学のフロンティア領域に触れる! 理論経済学の基礎となる数学的手法を学ぶゼミ
現代経済学の主たる分析ツールである「動的計画法」について学ぶ。動的計画法とは、将来を予想して合理的に行動する経済主体(企業や政府など)の分析に適した数学的手法。ゼミでは全員で基礎理論についてのテキストを読み、活発な議論を通じて理解を深めている。さらに深く理解するための勉強会(サブゼミ)もあり、ここでは位相数学や関数解析などのより高度な数学を学んでいる。
研究室DATA
田中 久稔 准教授
田中ゼミナール(政治経済学部 経済学科)
所在地:早稲田キャンパス1号館
Work
大学院レベルの経済数学に取り組む
教室にはいると、3、4年生合同のゼミが始まっていました。全員、英語のテキストを真剣に解読中。しばらくすると田中先生が「最初の4行だけ、解説してみて」とひとりを指名し、黒板の前に出た学生が、数式を書きながら説明を始めました。ときどき先生の助言を受けながら、黒板は次第に難解な数式でいっぱいになっていきます。これがたった4行のテキストの解説?
「この教科書はマクロ経済学専攻の大学院生が研究用に使うものです」とあっさり言う田中先生。難解なのは当然でした。「だって、大学生レベルのものなら自分で読めるでしょ。自力では読めないものを、人の力を借りて何とか勉強していくところがいいんです」。
それでは授業についていくのが大変なのでは? とゼミ生に聞くと「確かにハードですね。先生がじっくり説明してくれるので、授業についていくのは難しくないです。でも、今日やったことは来週までに、人に説明できるくらいまで理解してくるというのがこのゼミのルール。できないと先生に血祭りに(笑)いや、責められるので、復習が大変です(4年・石井 智史さん)」
「ここまでやっているゼミは他にあまりないでしょう」と田中先生は言います。それでも取り組むのは「学部で教わる通常のマクロ経済学は、何十年も前に完成された理論まで。でもこのゼミでは、経済学のフロンティア領域、現代の経済学にぎりぎり触れることができる」という先生のこだわり。そんな先生のもとに、どうせやるなら本格的に勉強したいという学生たちが集まって、真剣勝負のような授業が作られているのです。
4年・石井 智史さん(幹事長)
ただいまテキストと格闘中
一見難しい数式が、経済現象と結びついていく
このゼミでは、さまざまな経済主体(企業や政府など)や社会的な現象を、数学的な分析ツールを使って研究しています。...と言われてわからない顔をしていると、田中先生は「たとえば、失業者がいて、月に10万円の失業保険をもらっている。ハローワークで月収12万円の仕事を紹介されたら、その仕事につくと思いますか?」つかないんじゃないでしょうか。「そうです、次は月収20万円の仕事がくるかもしれない。仕事についてしまえばそのチャンスをのがすと思ったら、2万円程度の収入増では就職しない。ではその人は月収いくらの仕事なら就職するか。それは計算で出せます」。なるほど、経済は数学と関係があるんですね。
「2年生のとき授業を受けて、先生の説明がウィットにあふれていて面白かったので、このゼミを志望しました」と言うのは3年の松本 壮さん。「一見難しい数式も、こういうことなんだよって先生が話してくれると、すっとわかる気がするんです」。確かに、失業者から始まって婚活やひきこもり、企業の在庫調整まで、先生の話はつきません。「勉強するのはほとんど数学ばかりで、これを乗り越えないと先に行けない。だからこそ、常に経済学に戻って説明するようにしています」と田中先生。ゼミ生たちは「とにかく博識で、わからないことは何でも一から説明してもらえる」「ゼミにはいって一番の収穫は、先生と出会えたこと」と口を揃えます。そんな先生の話術とリードがあればこそ、ハードな勉強にも、ついていけるのかもしれません。
3年・松本 壮さん
先生は前の席から発表者をリード
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このゼミを目指すキミに先生おすすめの本
ヤバい経済学 -悪ガキ教授が世の裏側を探検する-
スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー著/望月 衛訳(東洋経済新聞社)
この本には、相撲の八百長、カンニング、麻薬取引や育児など、従来の経済学では分析の対象にしなかったかもしれない、一風変わった現象ばかりが取り上げられています。たとえば「ある幼稚園では、子どものお迎えに遅刻した親から罰金を徴収することにしたところ、逆に遅刻が増えてしまった」そうです。どうしてか? 理由は本書に書いてあります。