「消費者に何をどのように伝えるのか」を、理論と実践から研究する 嶋村ゼミ

現代社会と人々の暮らしに欠かせない広告と、マーケティングの中でも特にコミュニケーションに関わる分野を研究対象としています。ゼミは、テキストを講読して広告理論とマーケティングの基礎を学ぶ「本ゼミ」と、実際の企業から提示された課題の解決にグループで取り組む「サブゼミ」の2本立て。 本ゼミで学んだ知識や理論をベースに、企業のマーケティング企画やプロモーション提案を考えていきます。また、ディスカッションやプレゼンを通して、グループワークのスキルを上げることもゼミの目的のひとつです。
研究室DATA
嶋村 和恵 教授(商学部 マーケティング・国際ビジネストラック)
現代広告研究IA・IB
所在地:早稲田キャンパス11号館
(ゼミ募集の期間のみ公開)
Work
理論を学ぶ「本ゼミ」+実践的な「サブゼミ」=嶋村ゼミ
ゼミの名前は「現代広告研究」。ですが、嶋村和恵先生によると、このゼミのテーマは、広告そのものの研究やポスターやコマーシャルといった広告の制作ではないとのこと。では、何を研究しているのでしょうか?
「テレビCMや新聞広告などのいわゆる狭い意味での『広告』だけでなく、広告も含めたマーケティング、その中でも特に『消費者に何をどのように伝えれば、効果的に伝わるのか』というコミュニケーションの分野を中心に研究しています」(嶋村先生)。
ちなみにマーケティングとは、企業の活動の中で商品やサービスを売っていくためのさまざまな仕組みや考え方を指す言葉。通常、マーケティングには、流通経路や製品開発、販売戦略、価格戦略といった内容も含まれます。その中で、嶋村ゼミではマーケティング全般ではなく、あくまで前述のとおりコミュニケーション分野を重視した研究を行っているそうです。
さて、嶋村ゼミの活動は大きく2つに分けられます。ひとつは、「本ゼミ」と呼ばれる正規の授業。そして、本ゼミと同じ日に学生中心で行われている「サブゼミ」です。本ゼミでは、テキスト(2014年度は『基礎から学べる広告の総合講座2014』<日本経済新聞社>を使用)をもとに、広告やマーケティングの基本の考え方などを勉強します。
その際、単にみんなでテキストを読むだけでなく「グループごとに担当する章のポイントなどを発表してもらっています」と嶋村先生。グループ内でディスカッションして、発表する内容を検討したり発表時の見せ方を工夫したりすることには、「プレゼンテーションの練習」という意味もあるそうです。
一方のサブゼミは超実践的です。実際にある商品やサービスを取り上げて、マーケティング企画やプロモーション案を考えたり、さらには広告表現の提案をしたりということもあるのだとか。しかも課題は、その企業で実際に働いているゼミのOBや広告会社などから提示される場合が多いそうで、ゼミ生の緊張とやる気も自然と盛り上がります。
サブゼミでは、最終的にグループごとに考えた提案内容を企業や広告会社に発表して、講評をもらいます。ただ、学生が行うものとはいえ外部に対するプレゼンテーションになるため、本ゼミの時間を使って本番前にリハーサルすることもしばしばあるのだとか。そうした経緯もあり、「サブゼミは正規の授業ではありませんが、本ゼミとサブゼミの両方を合わせて『嶋村ゼミ』という感じですね」。

「お母さん的存在」(3年・冨坂さん)と、ゼミ生みんなから慕われる嶋村先生。研究についてはもちろん、メールの書き方や敬語の使い方なども丁寧に指導してくれているそうです。

企業から実際に出された課題のひとつ、女性向けファッション誌を読んでもらうためのプロモーション案をプレゼン中。見やすくわかりやすいスライド資料を作ることも、プレゼンでは非常に重要です。
実践で力を発揮するには、基礎的な知識や理論が重要になる
ここからは、2014年度のサブゼミで実際に取り組んだ課題のひとつと、あるグループのプレゼン内容を見ていきましょう。広告会社から提示された課題内容は、「大学4年生に、2015年春までにとある女性向けファッション誌を手に取ってもらうための企画とプロモーション方法を考えること」。
女子・男子2人ずつの「3班」では、この課題に対して「美容院と美容院検索サイトの活用」というプロモーション企画を提案しました。当然ながら、単なる思い付きのアイデアではありません。3班では、まず大学4年生など4名と一緒に書店に出かけて「発売中のファッション誌でいちばん欲しいものを選んでください」という調査を実施したそうです。
また、どんな雑誌をどのような理由で購入して読んでいるのかといったヒアリング調査も行い、その結果「まずは一度読んでもらうことが大事」という結論を導き出しました。そこから、「普段は手に取る機会がない雑誌も、じっくり読んでもらえる美容院を利用する」という具体的な企画が生まれたのです。なるほど、確かに美容院なら普段読まない雑誌も読みますね! さらに、美容院検索サイトの活用で、そのファッション誌のバックナンバーを読んだり、トリートメントの特典も受けたりが可能になるのだとか。
本ゼミの時間中に行われた3班のプレゼンのリハーサルは、拍手をもって終了。その後は、先生と他のゼミ生からの質問タイム。嶋村先生からは、調査対象の人選方法、書店で雑誌を選んでいた時間について、またゼミ生の一人からは「このファッション誌ならではの特徴はどこにあるのか」といった質問が投げかけられていました。
この日はほかにも、夏合宿で出された「個人宅に設置する後付けシャッターの認知度を上げるには」という課題に対するプロモーション案のリハーサル、また3・4年の有志7名が取り組んでいる唐津市の魅力をアピールするための企画、「唐津プロジェクト」のゼミ生制作によるPRビデオの上映もありました。いずれも、発表するゼミ生たちはイキイキとしているのが印象的です。
「ゼミ生にとっては、テキストを読むよりも実際の課題に向き合って解決策を考えていくサブゼミのほうが楽しいようです」と笑う嶋村先生。「ただし、それだけではダメ。バックにしっかりした広告やマーケティングの理論、また必要なデータをきちんと集めるといった基本があればこそ、課題に対して適切で提案を出していけるようになるんです」。
ゼミ生全員が広告やマーケティングの業界に進むわけではありませんが、このゼミで身に着けた「誰に何をどのように伝えれば効果的か」という考え方や理論は、どんな業界に進んでも仕事の上で、あるいは日常生活でも大いに役に立つのではないでしょうか。

2年前から、ゼミ生有志と佐賀県唐津市が共同で進めている「唐津プロジェクト」。ゼミ生が自らカメラを回し編集作業も行ったPRビデオは、BGMなど一部手直しはあったものの、東京や大阪の観光セミナーで実際に上映されました。
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