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ゼミ紹介

Seminar

異文化に関わるテーマを自由に設定して、自分なりに「論」を展開する 小田島ゼミ

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異文化を理解して、受け入れる。言葉で言うのは簡単ですが、実際にはその過程で切り捨てられる部分があったり、何らかの摩擦を生じたりと、さまざまなことが起こります。また、異文化が既存の文化に影響を与えて、既存の文化が変化していくことやその逆もあるでしょう。そうした異文化の受容時に起こる、さまざまな問題と事象について考察していくゼミです。ゼミ生一人ひとりが自分のやりたいテーマを自由に設定して研究を行い、ゼミでの発表や質疑応答を通して考察を深めていきます。

研究室DATA

小田島 恒志 教授(文化構想学部)
異文化受容論ゼミ (秋期)
所在地:戸山キャンパス33号館

 

Work

異文化受容の問題に関わる事柄なら、研究テーマは自由!

 大学のゼミでは、先生が専門とする学問分野の中から、ゼミ生が研究テーマを選ぶことが一般的です。「異文化受容論ゼミ」を指導する小田島恒志先生の専門は、イギリスやアメリカなど英語文化圏の小説や戯曲の翻訳です。けれども、このゼミでは翻訳を学んだり研究したりするわけではないと小田島先生。では一体、何を学び、研究するゼミなのでしょうか?

 「一言にまとめると、異文化を受容するときに起こるさまざまな問題について考えるゼミです。たとえば翻訳で言うと、単に外国語を日本語に訳せばいいというものではありません。国が違えば文化も異なり、背景にある文化から考えなければ正しく伝わらないことがよくあるからです」(小田島先生)。もちろん、異なる文化との接触や受容によって「何か」が起きるのは、翻訳の世界に限りません。それを研究していくのがこのゼミというわけです。

 異文化受容の際に起きる問題に関わっていれば、具体的な研究テーマはゼミ生が自由に決めて構いません。1学年15名ほどいるゼミ生のうち、毎年3~4名は翻訳や英米文学をはじめとする文学に関わるテーマを設定するそうですが、それ以外のゼミ生のテーマを聞くと本当に多彩です。「これまでには、モーニング娘。とAKB48との違いを研究した学生や、手品サークルに所属していてゼミに入るときから『学生マジック』の特徴やその意義について研究したいと言っていた学生もいました。そんな研究ができるのは、恐らくこのゼミだけでしょう」。なんと、「異文化」と言っても“外国の文化”限定ではないんですね。

 ここからは、具体的なゼミの活動内容を紹介しましょう。ゼミは3、4年生合同で行います。春学期には、まず学年の区別なく3~4人のグループを作って、毎回グループ内で自分のやりたいことを簡単に発表。メンバーを変えながら何回かグループ内での発表を繰り返します。そして、3年生がゼミに慣れて来たら、4年生が一年間かけて進めてきたゼミ論の中間発表が始まります。

 また、夏休みに実施するゼミ合宿での活動もとてもユニークです。ゼミ生は、自分が進めている研究から「しっかり論じることができている」と思う部分をA4サイズ1枚程度にまとめて、合宿に持って行きます。合宿では2人一組になってお互い相手のペーパーに赤字を入れ、最終的に相手に代わって発表するのだそうです。「誰でも、自分のことはよくわからないけれど、他人の論文の欠点はよくわかるのが面白いですね」。

 ちなみに、夏合宿では勉強や研究だけでなく、みんなで遊ぶのも楽しいと4年生の角さん。「うちのゼミは3、4年生の仲がとてもよくて、アットホームなのが魅力なんです。合宿する場所も、毎年ゼミ生が自分たちで行きたい場所を選んでいるんですよ」。

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「パズドラが飽きられたのは課金のせいですか? スライドにあった人気ゲームランキング上位には、課金型のゲームも入っていますが・・・」。発表後は、ゼミ生からも次々に質問が投げかけられます。鋭い質問や意見は、研究を進めたり方向を修正する上での参考になるとのこと。

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ゼミ生の発表中は、教室のいちばん後ろで聞いている小田島先生。発表が終わると、論として成り立っていない点や不足している部分を、ユーモアを交えつつ鋭く指摘します。「普段はすぐに『笑い』を取りに来る先生ですが、どんなテーマの発表に対しても的確にアドバイスをしてくれるのでとても尊敬しています」(3年・加藤さん)。

研究する上で大切なのは、「論」として成り立っていること

 春学期と夏合宿を通して、3年生も4年生も自分の研究テーマと向き合い、他のゼミ生の意見も聞くことで徐々に考察を深めていきます。秋学期になると、4年生はゼミ論の仕上げに向かっていっそう準備に力を入れ、そして3年生はどんなテーマで研究をするのか、研究をする上でどんな課題が考えられるのかなど、現段階の状況をゼミで発表します。取材に伺った日は、3人の3年生が発表を行いました。

 トップバッターの加藤史起さんの研究テーマは、「特異文化に見る、新たな流行メカニズム」。スマートフォンやパソコンなど、限られた場でのみ浸透する文化を「特異文化」と名付けて、特徴や従来型の文化との違い、またその広がり方や衰退などについての考察を説明。気になる「特異文化」の例としては、「パズル&ドラゴンズ」と「初音ミク」を挙げていました。

 パワーポイントで作成したスライドを投影しながらの発表は、約15分間。終わるとまず小田島先生が講評します。先生が指摘したのは「全体的に根拠が薄い」という点。「従来の文化の例に挙げた『ハロウィーン』が、1997年の東京ディズニーランドのイベントから日本に定着したというのも、パズドラが課金主義に走ったから廃れたというのも、数字を挙げるなどもっと根拠を示す必要があるんじゃないかな」。

 その後、数名のゼミ生との質疑応答があり、続いて発表したのは「世界遺産と地域振興」をテーマにした川戸咲さん。3人目は、中国からの留学生・李容慧さんが、「日中翻訳事情」をテーマに翻訳の技法や翻訳家の現状、日本語と中国語の違いなどについて発表しました。パズドラに初音ミク、世界遺産、日中翻訳。3人の研究テーマを並べるだけでも、本当にバラエティに富んでいることがわかります。

 小田島先生の研究分野とはまったくかけ離れているテーマで研究している学生も多い中、先生はどのような指導をしているのでしょうか。「私がアドバイスするのは、主に『論』として成り立っているのかというところです。資料を調べてまとめるだけでは論文にはなりません。必ず何かを論じなくてはならない。また、論じる以上は『なんとなく』ではダメで、必ず根拠を示さなくてはいけない。それができているかどうかを見ています」。また、学生たちにも「論じているかどうか」に注目して発表を聞くように指導しているそうです。

 自分がやりたいことを何でも研究テーマにできる小田島ゼミですが、自由にできるということは、その分、自分が頑張らなければいけないということでもあります。ただ、すでに述べたようにゼミでは繰り返し発表の機会があり、その都度、先生から「論として成り立つか」という指導を受けることができます。「また、他のゼミ生の存在も大きな助けになるのではないでしょうか。ゼミ論を書くときには、みんなからもらった情報を手繰り寄せることで何か得られることも多いと考えています」。こうした書き上げたゼミ論と、書き上げる過程で身に着けた「論じる力」は、ゼミ生一人ひとりにとって一生の財産になるに違いありません。

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発表後には、全員が何かしら発言するかBBS(掲示板)に書き込むというのがルール。それもあって、聞いているゼミ生もみんな真剣そのもの! 多彩なテーマの研究に触れることで「卒業する頃には、全員が自然に『雑学王』のようになるんですよ(笑)」(小田島先生)。

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「日中翻訳事情」の発表後に、実例を挙げながら翻訳は文脈から考えるべきだと説明する小田島先生。「『Think!』は必ずしも『思考せよ!』ではなく、この場合は『ねえ!』と訳すのがいいんじゃないかな」。自分の研究テーマとは違っていても、ゼミ生たちは興味津々の様子で聞き入っていました。

Message

先生からのメッセージ

 
早稲田大学は「自由な校風」だと言われています。ただし、「何もしないでいい自由」はありません。もし、そう思っている人がいたらそれは勘違いです。法に触れない範囲で「何でもしていい自由」なのだと私は考えます。だから、やりたいことがあって、それをやり遂げるという強い意志を持った学生に来て欲しい。もちろん、大学に入ってからやりたいことを見つけるのでも構いません。そして、先生に教わろうと待つのではなく、まず自分から勉強すること。意欲のある学生には応えてくれる大学だと思いますよ。

先輩からのメッセージ

3年・加藤 史起さん
3年・加藤 史起さん
各ゼミを紹介するガイダンスで「このゼミでは何を研究対象としてもいい」という説明を聞き、「ここで自由にやってみたい!」と思ったのが異文化受容論ゼミを選んだ理由です。ゼミに入って夏合宿に行く前に、好きな「流行」や「サブカル(サブカルチャー)」に研究テーマを決めました。ゼミだけでなく、文化構想学部自体がとても自由度の高い学部です。社会学も学べれば尖ったサブカルのようなことも勉強できて、とても面白いですよ。

先輩からのメッセージ

4年・角 華恵さん
4年・角 華恵さん
子供の頃から和太鼓を習っていて、日本文化に興味がありました。そこで、和太鼓が海外に与えた影響など「日本文化と海外文化の接触」をテーマにゼミ論を書きたいと考えています。春学期にゼミで中間発表した内容からはだいぶ変わってきていて、今は試行錯誤を重ねている段階です。早稲田大学に入学して感じたのは、全国からさまざまな人が来ているということ。自分の価値観を広げられるという意味では、早稲田に入って本当によかったと思っています。

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コペンハーゲン

マイケル・フレイン/著 小田島恒志/訳(ハヤカワ演劇文庫)

 共にノーベル物理学賞を受賞した、ドイツ人物理学者ハイゼンベルクとユダヤ系デンマーク人物理学者のボーア。第二次世界大戦中のある日、2人は何を話したのか――。会話の流れ次第では、ドイツが先に原爆を開発し、第二次大戦の行方も変わっていたかもしれません。2人の会話を繰り返し再現しながら、物理学史上の謎ともいわれるある日の会談を考察していく戯曲です。非常に多くのことを考えさせられる作品だと思います。できれば舞台で見て欲しいですね。
永遠のジャック&ベティ

清水義範/著(講談社文庫)

 パロディ短編集の表題作で、昔中学の英語の教科書に登場していたジャックとベティが初老になって再会したら・・・という内容です。「あなたはジャックですか?」「はい、私はジャックです」とか、「一杯のコーヒーまたは一杯の紅茶を飲みましょう」「そうしましょう」といった会話だけで進んでいきます。直訳調がおかしいことはわかっていても、実際に訳すときにはみんなもそうなってしまう。翻訳を学ぶ際の、少々変わった「参考書」としてお勧めです。
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