ことばの多様性・バリエーションを収集・分析する 西田ゼミ
本ゼミでは、ゼミ生の身の回りや早稲田大学のキャンパス及びその周辺地域をフィールドとし、そこで使用されている言語状況を解明するために、参与観察的フィールド調査を行い、収集した自然発話データおよび実態調査の結果を基に、言語使用の諸相を整理し、彼らの言語生活および彼らを取り巻く言語問題を考察したいと考えております。調査に必要な言語学的知識は授業で紹介します。皆さんが学んでいる専門外国語を十分に生かせるゼミにしたいと考えています。
研究室DATA
西田 文信 教授(教育学部 複合文化学科)
複合文化学演習6
所在地:早稲田キャンパス16号館8階
Work
ことばの多様性・バリエーションを収集・分析する
かつてグローバル化による世界の言語的文化的均質化が語られ、それに対抗する形で少数言語の保護及び危機言語の救済が叫ばれました。しかし世界は考えられたように言語的均質化に向かうのではなくむしろグローバル化は世界の多言語性を顕在化させつつあると言えます。一国一言語という19世紀ヨーロッパ型国民国家の理念型がもはや通用しないことは明らかです。
言語学のフィールドワークをしてみたい、多言語・多文化状況をミクロなレベルで解明したい、多言語・多文化社会成立の仕組みを知りたい、目の前に立ちはだかる疑問点を解きほぐし、物事を一歩抽象化して考える能力を身につけたいという意欲ある学生さんに来ていただきたいと思います。
ゼミで扱う内容について
一つ目は、現地調査を基礎として個別言語を記述・分析・整理してその言語特徴を解明する(記述言語学)とともに、言語間の相互比較からより古い段階の状態を推定して歴史的変遷を跡付ける(歴史言語学)作業です。言語を調査する際には国際音声記号を用いて記述していき、これまで研究されていない未記述の言語をゼロから調べていきます。未知なる音の羅列でしかなかったものが、意味のある言語と認識できるようになる過程は、この上なくスリリングかつ興奮に満ちたものです。
二つ目が、危機言語についてです。今日、世界各地で話者数の多い大言語が広まり、少数言語が消滅の危機に瀕しています。残念ながら既にこの世から消滅してしまった言語も少なくありません。しかし近年では、自分たちの言語を保持・活性化しようという運動が始まっている地域もあります。私は主にブータン王国で少数言語の記録・アーカイブ化を行うとともに、社会貢献の一環として、ブータン政府と協力し少数言語の保持・言語文化の継承についての活動も行ってきました。
三つ目は言語教育についてです。世界の諸言語を見渡して共通点と相違点を研究する分野を言語類型論といいます。私はこれまでの言語学習の経験から、中国語を世界の他地域の言語と比べると、当然差異も多数ありますが共通点も多くあることに気が付きました。孤立語(語形変化がない言語)である中国語を、膠着語(「てにをは」が付く言語)である日本語や屈折語(格変化のある言語)である英語と比較対照した結果、気付いたことです。この経験を応用した効果的な言語学習の方法論を中国語教育の現場で生かしています。
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言語と社会
P.トラッドギル 著、土田滋 訳(岩波新書)