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ゼミ紹介

Seminar

日々のニュースから生きた学問「損害保険」を研究する中出ゼミ

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事故や自然災害など偶然の出来事によって生じる損害を補償する保険「損害保険」について、制度や商品内容、契約などさまざまな角度から研究するゼミです。損害保険の勉強を通して、経済や社会を幅広く学ぶことも目的としています。また、与えられたものを理解して記憶する高校までの勉強とは異なり、自分自身でテーマを見つけて、自分で調べたりゼミ生とディスカッションをしたりという中で問題を掘り下げて、解決に導いていく。そうした積極的な「学ぶ姿勢」を習得することも重視しています。

研究室DATA

中出 哲 教授(商学部 商業・貿易・金融系列)
所在地:早稲田キャンパス11号館

 

Work

話題のiPS細胞研究だって、実は損害保険と関わりがある!

 損害保険を研究するゼミというと、専門用語や細かい数字が飛び交って難しそう――そんな先入観を持つ人もいるのでは? 真実を確かめるべく、まずはある日の中出ゼミを覗いてみましょう。

 ゼミは毎回、新聞記事に関する発表から始まります。この日、3年生の川越さんが取り上げた記事には「iPS細胞」の文字が。2012年のノーベル賞受賞で世間の注目度が一気に高まったiPS細胞研究ですが、損害保険と何か関係があるのでしょうか? 記事の内容は、iPS細胞の臨床研究を対象とした賠償保険を大手損保会社が検討しているというものでした。川越さんは、まだ曖昧なことしか書かれていない記事から、保険が具体化した場合の内容を推測し、すでにある保険との差異や考えられる問題点などを説明していきます。

 ひと通り発表が済んだら、討論時間を挟んで「賠償保険の話は、政府の働きかけもあったのでは?」「アメリカでもiPS研究をしていますが、海外の損保会社の動きはどうですか?」など、先生も交えて活発な質疑応答が行われました。中出ゼミには「何か質問のある人は?」「シーン...」という雰囲気はまったくありません。

 それにしても、損害保険のゼミでiPS細胞の話が出てくるとはびっくりですね! 「いえいえ、驚くことはありませんよ」と中出先生。「なぜなら、損害保険は世の中の森羅万象、どんなこととも関係しているからです」。これまでにゼミ生が新聞記事から見つけたテーマは、介護問題、中国の反日運動、中東の紛争など、個人の問題から企業、国際的なことまで、非常に多岐にわたっています。そしてもちろん、そのどれもが損害保険と関わりがあるとのこと。

「たとえば、 反日運動などで日本企業の建物に損害が生じる危険があるとします。 保険でカバーされない場合、 企業は海外進出に慎重になるかもしれません。ところが、万が一の場合でも保険があるとなれば、投資により積極的になれます。保険には、プロジェクトを後押しする機能もあります。このような形で、損害保険を通じて社会や経済について勉強することになるんです」。

 どうやら、損害保険は「難しそう」というより「おもしろそう」な存在のようですよ。

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3年生のゼミでは、毎回最近の新聞記事から損保関連の話題をピックアップして、持ち回りで発表するのが恒例。損害保険への関心が普段から高まるというのはもちろん、そこには「もっと新聞をしっかり読んでほしい」という先生の考えもあるのだとか。

「事象」から入って、興味を持って「理論」を学ぶから身につく

 さて次はグループごとの発表です。最初のチームのテーマはなんと「ストーカー保険」。テーマそのもののインパクトと、用意されたスライドに映し出された少々不気味な男性の画像に教室がどよめきました。 といっても、内容はいたってマジメ。ストーカー被害の現状を解説した後、ストーカーからの暴力による怪我治療を手厚く補償したり、 警備にかかる費用を支払ったりする「ストーカー保険(通称)」を紹介していきます。身近な問題だけに、ゼミ生は興味津々。

 しかも、途中のスライドにも「ところがどっこい!」という文字が突然大きく表示されるなど、みんなを引き付ける工夫の効果も抜群です。これには、先生も「スライドを使いこなすプレゼン能力が素晴らしい!」と感心していました。中出ゼミでは、ゼミを通じて、プレゼン能力、そしてコミュニケーション能力を高めることも非常に重視しているそうです。
「社会に出たら、この2つの能力が大切になるからです。そこで、普段のゼミや合宿などでもプレゼンや即興スピーチの機会をなるべく多く設けるようにしています」
 「大手の損保会社は、実はストーカー保険からすでに撤退していた」と結末も衝撃的だった発表に続いて、さらにこの日は数年前に社会問題にまでなった「損害保険会社の保険金不払い」についての発表も行われました。

 このように、専門の教科書などは使わずゼミ生による発表とディスカッションを中心に進めていくのが中出ゼミのスタイル。なぜ教科書を使わないのでしょうか? その理由を先生にうかがうと、こんな答えが返ってきました。
「損害保険を学ぶには、専門書を読み込んで理解するという伝統的な学習方法も大切だと私自身は考えています。ただ、保険論には抽象的な部分もあって、最初から本で学ぼうとすると難しくて2、3ページで眠くなっちゃう人も多い(笑)」。確かに多そうですね...。そのため、まずは実際のニュースや学生自身が関心を持った事象を取り上げるという方式を取っているそうです。

「自分が興味を持った具体的な事柄から入って、どうしてそうなっているのを調べるうちに、必ず専門書を調べたり論文を読んだりして知識を深める必要が出てきます。結果として、自分から積極的に理論書に向かい合うことができるんです。そして、4年生における卒論研究に結び付けていきます」

 ほかにも、損保会社を訪問するなど実務の第一線の人に会って直接話を聞く機会を積極的に設けたり、ゼミの夏合宿では「グループごとに新しい保険会社と保険商品を考え、プレゼンする」といった課題に取り組んだり。中出ゼミでは、損害保険という生きた学問を、さまざまな方法から学ぶことができます。

 ところで、「ゼミの方針は、ゼミ生自身が決める」というのが中出ゼミの毎年の決まりなのだとか。現在の3年生は、先輩たちから引き継いだ「社会との懸け橋」というキーワードをベースに、社会に出ても通用する能力や考え方を高めていこう、という方針でゼミに臨んでいるそうです。ゼミでの発言が活発で、生き生きとした雰囲気なのは、なるほど「自分たちで方針を決めて作り上げているゼミだからだったんですね!

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ゼミでの発表方法は、学生に任されています。パワーポイント(プレゼンテーション用のソフト)を使ってスライドを映す学生もいれば、レジュメ(発表内容を要約した紙の資料)を配る学生も。どちらにしても、大切なのは相手にわかりやすく伝えること!

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発表の途中には討論時間があり、周囲の人と一度意見を交換し合うのが中出ゼミ流。その後、発表者への質疑応答が行われます。「理想は全員が発言することですが、一人ひとりが質問や意見を言うのは時間的に難しいため、討論時間を設けているんですよ」(中出先生)。

Message

先生からのメッセージ

 
高校生のみなさんにとっては、商学部は少々わかりにくい存在かもしれませんね。商学部は、世の中で実際に起きている出来事との関わりの中で、経済や法律から、マーケティング、心理学まで、さまざまな分野を勉強していこうというのが特徴です。 社会との接点にあって生きた学問を扱っていますから、非常におもしろいと思います。 グローバル化が進んでいる現代ですが、保険はもともとグローバルで、日本だけでなく、世界中のあらゆる事象が関係してきます。

先輩からのメッセージ

3年・市川 智子さん
3年・市川 智子さん
2年生後期に中出先生の「保険論」を履修し、授業がわかりやすかったのと先生が優しかったのが、このゼミを選んだ理由です。実は、当時は保険自体にはそれほど興味はありませんでした...。でも、ゼミに入ってからは、学生同士での議論がとても刺激になって、今は保険の勉強を通じて自分も成長していきたいと強く感じています。このゼミなら、社会に出たときに役立つ力が身につきますよ!

先輩からのメッセージ

3年・萩原 拓也さん
3年・萩原 拓也さん
損保会社でアルバイトをしたことから、損害保険についてもっと知りたいと思うようになり、このゼミを志望しました。ゼミでいちばんおもしろかったのは、ペット専門の損保会社の社長に会えたこと。実務家の方から、今の保険の問題点などを直接聞けて、非常にためになりました。ゼミのおかげで勉強に対するモチベーションもすごく上がりましたね。大学生になったら、ゼミに限りませんが、勉強面で一生懸命打ち込めるものを見つけるといいと思います。

Recommend

このゼミを目指すキミに先生おすすめの本

はじめて学ぶ損害保険

大谷孝一・中出哲・平澤敦・編著(有斐閣)

 損害保険の意味や仕組みなど、基本的なところから説明している本で、私も一部執筆しています。高校生にはちょっと難しいかもしれませんが、 図や表を多く使ってわかりやすく解説していますので、比較的とっつきやすいはずです。「損害保険って何だろう?」と少しでも関心を持ったら、一度読んでみてください。
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