環境のための技術と人の暮らしをつないで 未来の社会を創り出す永田・小野田研究室

「省エネルギー」や「創エネルギー」をはじめ、環境関連の技術を開発。それと同時に、その技術を実際に使うことができる新しい社会システムをつくっていくことも目標としています。そのため、一般の企業や官公庁との接点も多く持っています。大学の中にいるだけでは絶対に出会えない人たちと出会えるのもこの研究室の特徴といえるでしょう。
※環境エネルギー研究科には、創造理工学部総合機械工学科に入学し、環境エネルギー研究科の先生の研究室に入った学生が所属することになります。
Work
ものづくりの精神を環境分野で発揮する
今、世の中に共通するキーワードのひとつに「環境問題」がありますね。ゴミを分別して出すことも、冷蔵庫のトビラはなるべくすぐに閉めようとすることも、ゴーヤなどの野菜を庭で育ててみることも、すべて環境問題につながります。企業も、自社の商品や活動がどんなに環境にやさしいかをアピールしています。テレビのCMをいくつか見ているだけでも、「環境」という言葉やそれを連想させる表現がどんどん出てきます。
この研究室の研究内容は、まさにこの環境分野。しかし、「環境」とひと言で言っても、含まれる事柄は幅広いですよね。小野田先生によれば、この研究室でやっているのは、特に「環境エネルギー」分野とのこと。「もともとは機械工学の中にあるので、ものづくりが得意なんです。ただ、この研究室では“もの”を完成させることがゴールではありません。環境のためにつくった“もの”を普及させるために、社会システムづくりも含めてやっていこうという考え方が大切なベースになっています」。
先生のお話の意味は、そのあとすぐに見えてきました。なぜならその日は、企業と共同で進めているプロジェクトの説明会。東日本大震災の被災地に研究成果を持ち込んで、新しい街づくりをしようという計画が進行中だったのです。復興住宅のエネルギーシステムや交通システムの開発に研究成果が生かされます。しかもそれらは、すべて、再生可能なエネルギーを利用したり、効率よく循環させたりと環境に配慮されていて、人が無理なく、快適に利用できる仕組みにするのが目標。ひとつひとつは技術開発だけど、実は、エネルギーの視点から街全体をデザインしているのです。
その説明会には、研究室の学生だけでなく、プロジェクト実現のための大切なパートナーである企業の人たちも並んでいます。
「決して受け身にならなっちゃダメだよ」
「現場に一緒に行くんだから、成果を出し合おう」
などなど、先生や企業側から叱咤激励する声も。これは、学生の研究に対する姿勢や、その成果を期待する気持ちの表れなのでしょう。

環境分野には幅広い事柄が含まれます。これは、廃棄物の不法投棄が問題になったときの資料。現場は研究データを集めるためのフィールドであると同時に、その結果をフィードバックして、確実に問題を解決をしなければいけない対象でもあります。
研究室を飛び出すのが特徴の研究室
実は、お話してくださった小野田先生は、この研究室の指導教員でありながら、同時に会社の会長(創業者)でもあるという人物。2003年、早稲田大学の博士課程1年生のときに、開発したソフトをもとに起業した方なのです。
ということは、この研究室の目標は起業することなのでしょうか?
「いえ、将来の仕事の仕方のひとつとして、起業もありますが、それが研究室の目標になっているわけではありません。ただ、企業や社会との接点は大切にしています。研究のための研究はしない。研究の成果をちゃんと社会の役に立てていかなければいけません」。
研究室に入って半年の河口亮介さん(4年生)も、まさにそういう部分に魅力を感じたそうです。「機械科って、研究室にこもって実験する閉鎖的なイメージがあったんです。でもこの研究室には社会に出て行こうという姿勢がある。出張も多くて、いろんな地域の人や企業の人と関われるのはこの研究室入ってよかったと思うことのひとつです」。
では、具体的にはどんな研究をしているのでしょうか? 今田宗介さん(4年生)は私たちにもわかりやすい身近な環境問題を話してくれました。「僕は例えば、部屋の照明をどこまで間引きできるかという研究をしています」。
私たちの目はすっかり慣れてしまっているけど、「実は、明るすぎ」という場面がたくさんあるのだそうです。「この部屋も、本当はもっと電灯の数を減らせます。そうすると、節電になるし、お金も節約できます」。どれだけ間引けるかは、たくさんのシミュレーションを繰り返し行って調べていくそう。「このシミュレーションが、なかなか時間もかかるし、さらに、その結果を社会で実践できる形にするのは大変な作業です」。技術を開発するまでには、たくさんの細かなデータの蓄積も必要なのですね。
環境問題は、今、とっても旬な分野です。誰でも「こんな未来になればいいな」と考えることがあるでしょう。この研究室ではそういう思いを、ただ理想の話に終わらせることなく、実際に人の暮らしに浸透させることを目標にしています。
そこが頼もしい、けれど、そこが難しい。
だって、いろいろな地域で、いろいろな人が、いろいろな暮らし方をしているのだから。
それらについて、データを集めて、数値にして、機械をつくるというハード寄りなことも、それぞれの暮らしの中に入って、人の体の動き、そして心の動きも考えるというソフト寄りなことも、両方を引き受けるのがこの研究室。そしてその研究結果は、日本や世界の未来の一部に、確実に影響を与え始めていて、一時の流行に終わらず、これからの時代にも必要とされるに違いありません。

各地で行うイベントでは、一般の参加者たちと交流することも。写真は北九州市での様子。子どもたちと一緒にゲームをしながら、環境について伝えます(上)。家電製品の買い替えについて、環境面からアドバイス(下)。
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