テキスト、イメージ、社会
演習のタイトルは広範な内容ですが、原則は主に二十世紀までの美術作品とそれを取り巻く社会環境などについて研究します。基本的な文献を読みながら、時代毎の美をめぐる概念と様式の変化、イメージのあり方などについてのベーシックな知識を得ると同時に美術作品をみる目を養います。いわゆる「美術史」はアクセスの難しい専門家の領域とされていますが、少し噛み砕いた形で、思想的な背景も加えながら美術作品のイメージ性とそれがはらむ問題を考察していく演習です。
研究室DATA
丸川 誠司 教授(教育学部 複合文化学科)
複合文化学演習1 3-I, II
所在地:西早稲田キャンパス16号館8F
Work
時代背景、役割、あるいは作品に刻みこまれた画家の視線の表す問題を検討
前期はまず皆で概説書的な文献を読んで時代背景やイメージにアプローチするかなどの問題系をつかんだ後,発表で個別的な例を検討するという形を取っています。前期は基礎編ですので、主にルネサンス以降の時代における重要な芸術作品の特徴とそれが生まれた時代背景、優れた絵画作品というイメージの果たす役割、あるいは作品に刻みこまれた画家の視線の表す問題等を検討していきたいと思います。
最初は大美術史家、E. H. ゴンブリッチのわかりやすい美術史の概説書、「美術の物語」から、重要な時代とその特徴を扱った部分を選んで共同で読み進めます(イタリア・ルネサンス期における人間中心の視野の確立、ヨーロッパのバロック期における懐疑と豪華の共存、あるいは19世紀以降の神話・宗教的「物語」の衰退に代わって知覚を重視する印象派、あるいは20世紀のいくつかの前衛芸術運動のはらむモダン・アートの問題点など)。参加者には担当箇所を要約し,疑問点や問題点を列挙してもらい,共同で検討します。この作業の後は,参加者には関連したテーマ、ないし画家を選んで発表をしてもらうことになります。
後期以降は発展編で、各参加者の関心に応じていくつかの文献を選択し、共同で読み進めながらより深い問題系を探ることになります。文献は狭義の美術とは離れる場合もありますが、美術関係の文献は難しいものが多く、思想的な背景を理解したり、おざなりな理解に止まらないためには必要となってくる場合があります(例えばフーコーのマネ論など)。

A. ジャコメティ「ヴェニスの女」1956