海外経験ゼロでも大丈夫! 万全のバックアップ体制で、英語「で」学ぶためのベースを鍛える基礎演習
国際教養学部の新入生向けの基礎演習のクラスです。ほとんどすべての授業が英語で行われ、海外からの留学生や帰国子女が多い国際教養学部ですが、もちろん、日本国内の一般的な学校で勉強してきた学生もたくさんいます。大学入学までは英語を使う機会に乏しかった学生が、英語「で」学ぶための基礎を身に付けるためのトレーニングを行います。物語を読むことを通じて英語でアウトプットし、コミュニケーションできるようになることを目指します。
研究室DATA
グレアム・ロー 教授(国際教養学部)
First Year Seminar IB 47
所在地:早稲田キャンパス14号館
Work
『ハリーポッター』で、日本育ちの学生の英語力をバックアップ!
授業はすべて英語で行われ、学生の1/3は海外からの留学生、1/3は帰国子女。日本生まれ日本育ちで長期留学経験もない日本人学生は少数派。早稲田大学の国際教養学部について、よく聞く説明です。将来はグローバルな仕事に就きたい、いろんな国の人と学んで視野を広げたいという思いから国際教養学部を志望しているみなさんの中には、「でも、こんな環境に飛び込んでやっていけるのかな?」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。
「国際教養学部には、英語力をバックアップするためのクラスが用意されてるんです」。それが、ロー先生の「First Year Seminar IB」です。ご存知『ハリーポッター』シリーズや、映画も大ヒットしたファンタジーの古典『ホビット』を教材に、ファンタジー小説を読むことを通じて基本的な語彙を身に付けたり、英語でアウトプットやコミュニケーションができるようになることを目指します。「この学部で活躍するために必要なスキル、会話力、分析力、読解力、プレゼンテーション力が向上します」とのこと、英語を使った経験が少ない学生をがっちりサポートしてくれるのです!
取材にお邪魔した日は、『ホビット』のある章を2人チームで担当し内容やキーワードについてプレゼンテーションを行っていました。映画の画像を効果的に使いながら、構成や見せ方にも気を配った10分程度のプレゼンテーションが終わると、質疑応答が行われます。そして、この章の内容についての質問が記載されたワークシートを先生が用意されていて、それをもとに周りの人とディスカッションしながらさらに読み込んでいきます。もちろん、プレゼンテーション、質問や意見の発表、話し合いすべて英語で行われています。
「受験勉強で難しい単語、長い単語、複雑な単語をたくさん覚えますが、会話しようと思ったら『ドア』とか『ウィンドウ』とか基本的な言葉が使えないとダメ。そこで、物語を読んだら日常的なボキャブラリーがどんどん増えてくるから、ファーストステップとしてはちょうどいいんですよ」。しかもファンタジー小説には楽しい物語展開とともに現実社会の問題が投影されていたりもするため、大学生にとっても読みごたえがあるのだとか。1回の授業で60ページ、5週間で1冊を精読するのは大変ですが、読んで、お互いにコメントしあって、相当の力が付くそうです。
目的意識もやる気もあって、自信を持って英語で話しているというみなさん。ちなみに、みんなで遊びに行ったりするときは、日本語と英語を混ぜて話すこともあるそうです!
J・R・R・トールキン『ホビット』は大人のファンも多いファンタジー小説の古典。ファンタジーのジャンルの源流とされる『指輪物語』の前日譚です。
同じ立場だった先輩から『心配しないで、なんとかなるよ』
高校生までとはまったく違う大学での勉強。プレゼンテーションってどうやるの? レポートって高校のときに書いたようなものでいいの? それだけでも未知の世界なのに、すべて英語で! そう考えるとどこから手を付けていいのかわからなくなってしまいそうです。
そんな、大学での勉強方法ということも英語を学びながら身に着くように考えられています。ロー先生の授業ではまず先生のモデルプレゼンテーションが行われますし、授業の中では「メディアをどう使うか」という観点も持ちつつ、プレゼンテーションの組み立てを考えます。実際ロー先生のこの授業ではパワーポイントを使ったプレゼンだけでなく、紙にプリントアウトしたもの、発表チームの2人の掛け合いによるものなど発表する内容に合わせてさまざまな形態のプレゼンテーションが行われるそうです。
また、2年生の後半から全学生が参加する留学に備え、図書館やWebを学術にどう使うかなどのスキルも身に付けます。授業以外でも、常に手助けを得られる場所が開かれています。「ライティングセンターもそうです。英語で文章を書く、論文を書く習慣がない場合は、ライティングセンターに行けばサポートしてもらえる」。話すことも書くことも、これでなんとかやれそうですね!
さらに「SILS SEMPAI PROJECT(先輩プロジェクト)」という、新入生を支えるための活動も盛んです。先輩学生が主体となり、新入生が入学後すぐに学部の環境になじめるようにサポートするシステムですが、授業が始まる前から先輩になんでも相談できるというので、ぜひ活用したいもの。「どういう準備をした方がいいとか、たとえば読む量がすごく多いけどどうすれば?とか、英語に自信がない場合はどういうふうに練習した方がいいとか、具体的にはそういうアドバイスをもらっていますよ。先輩として、『心配しないで、なんとかなるよ』と伝えてあげられて、すごくいいプロジェクトです」。
そんな全方位の体制にサポートされて、国際教養学部に入学したみなさんは積極的にインプットとアウトプットを積み上げて、自分の専門分野の研究へとつなげていきます。「英語ができてあたりまえ」の環境では、外国人学生や帰国子女の学生に対して気後れしてしまうこともあるかもしれません。でも忘れないでほしいのは、英語「を」ではなく、英語「で」学ぶということにおける本当の勝負どころは、何を学び、何をアウトプットするかであって、英語の流暢さにはないということ。大学のサポート体制を最大限に活用して英語に関する心配を最小限にし、思い切り学んで世界に羽ばたきましょう!
クラスには2人のTA(ティーチング・アシスタント)が参加していて、議論の手助けをしてくれたり、疑問点に応えてくれたりします。
「今年のクラスは最初から積極的に英語で話していて、TAが『どうしよう!やることがない!』というほどです(笑)。」(ロー先生)