日本についての確かな知識をベースに国際的な問題に取り組む人材を目指す河野ゼミ
国際関係論で特に大事なのは、さまざまな専門領域を複合的に学び、研究するということを意味する「インターディシプリナリー(学際的)」という言葉です。特に法学部では、さまざまな法律の領域と国際法、国際社会の関係を考えることだと思っています。今日では、国際条約で決められたことが、国内の人の生活に直接に影響を与える場合が多くなっています。しかも、条約が一つの国内の法律ではなく、複数の法律に影響を与えることもしばしばみられます。このゼミでは、このような観点から、国際社会と国内の社会の関係を主に法的な面から考えることを目標にしています。ゼミでは、学生の報告とその報告に基づく討論を行っています。国際社会で活躍するためには、学問知識だけでなく、自分の意見を積極的に述べることも必要です。ゼミでの討論がそのための練習になればと考えています。
研究室DATA
河野 真理子 教授
河野ゼミ(法学部 主専攻法学演習 国際関係論)
所在地:早稲田キャンパス8号館
Work
「ゼミは君たちのものだ」
法学部国際関係論の河野ゼミ。グループごとに行う発表を元に議論するスタイルで進行します。今日のテーマは「国連PKOは権限拡大すべきか、それとも限定的であるべきか」。国連決議に基づいて行われている軍事的活動やPKOについては、実は国連憲章上、明示の規定が置かれていないとのこと。このため、今後どのように活動を行っていくかという議論が常に行われているのです。
各担当者の発表内容は「PKOの歴史と変遷」「PKOの法的根拠と国連憲章」「PKOの具体的事例及び近時の展開」。これを踏まえて、テーマであるPKOの活動範囲のあり方について議論が始まります。今日のディベートは、次回のテーマ「日本はPKO拡大に協力すべきかどうか」につながるそうです。「法」の枠組みに留まらない、一周り広がったテーマを取り扱うんですね。
「テーマも自分たちで決めるんですよ」。えっ、先生が決めるんじゃないんですか!? 3年生の円城寺彩奈さんがゼミの流れを説明してくれます。「学期の最初に全員で話し合う機会をもらって、国際問題を法的枠組みから見てという原則でどんなテーマでやりたいか、テーマをどう絞るか、どんな進め方をするか、全部自分たちで決めます」。しかも、4年生が仕切るわけでもなく、3年生が中心となって全員で! 先生、そんなうまくいくものなんですか!?
「ゼミは君たちのものだと最初に宣言します。そうすると、最初は失敗することもあって、だいぶ苦労するけれど、そのうち、大丈夫になるんです。手探りでやってみて、行き詰ったら相談に来ての繰り返し。みんな一生懸命努力してくれます。このプロセスが大事だし、それができるのはすごいことだと私自身思います」。しかもこれは、河野先生が早稲田でゼミを担当した最初の年に、ゼミ生達から「自分たちでやらせてください」と申し出があって始まったスタイルで、それが伝統となって脈々と受け継がれているのだそうです。これが、大学生の学び方というものなのですね。「こうして長年やってきて、なんの問題もなくゼミが進められるというのはすごいことだし、学生も成長しますよ」。さすが早稲田!
くじ引きで「拡大派」と「限定派」とに分かれて着席、それぞれの立場からの意見を戦わせます。穏やかな雰囲気ですが、相当異なる意見の持ち主が集まっているとのこと。
議論を有意義なものにするには、どんな進行を行えばいいか?ということまで考えねばなりません。「運営すること自体が、社会に出たときのある種のスキルになってると思いますよ」(河野先生)
「法学部は、実は国際的な仕事を目指す人には悪くないところ」
留学生など日本以外にルーツを持つ学生が毎年必ず数人いるというのも河野ゼミの特徴です。「日本人だけだとなかなか出てこない論点が出てくるなど、バックグラウンドがいろいろだから刺激し合えます。年齢学年関係なく、一人ひとりが考えたことを言い合える雰囲気もありますね」(円城寺さん)。国際的な視点も自然に磨かれる環境です。
「おそらく、高校生で国際関係で何かやりたいと考えている人は国際教養学部とかを考えると思うんですね」。たしかに、「国際的な職業」と漠然と考えたときに法律関係はなかなか思い浮かびません。「たとえば、TPPの問題でも、国際関係と国内への影響のどちらか一方だけを考えていてはきちんとした議論はできません。条約の国際的な文脈と、条約の履行のために必要な国内的な制度の両方を考えた交渉や議論が必要です」。なるほど、国際社会と国内社会の垣根が低くなっている現代、条約の締結だけでなく、ビジネス、行政、あらゆる場面で法に基づいた交渉が必要になってきます。そこで求められるのが、自分の国の法律をきちんと説明し、伝えられる能力なのだそうです。「単に英語が流暢にしゃべれるだけじゃなくて、日本のことを、英語の論理で説明できないと伝わりません」。六法を叩きこみ、国際的な文脈を理解し、日本について英語で伝える。こんな人材を目指すとなると、相当ハードな学生生活になりそうです...。先生は笑って「大変だと思います」。ただし、意識しているだけでも全然違いますよ、と優しくフォロー(?)してくれました。
「外に出て求められるのは日本の法律の説明であり、判例とその背景にある日本の社会の特性(歴史的経緯も現在も!)まで含めた説明が必要です。それができて初めて、日本を『特殊な国』にせずに済むと思うんです。それは法学部を出た人にしかできない仕事で、それができる日本人ってこれからますます必要になると思います」。国際的な仕事で、本当に役に立つ人材になるなら法学部も視野に入れてみて! 日本のために、世界のために、とことんがんばってみませんか?
「現存する最も古い条約はメソポタミアの国家間で紀元前2100年頃に締結されたもので、境界の不可侵が厳粛に宣言され、石碑に刻まれています。この石碑って、ニューヨークの国連本部にも飾ってありますよ」と、インタビュー中にも国際法の成り立ちを丁寧に教えてくれた河野先生。ハーグ国際法アカデミーでの講義が出版されたり、国連のオーディオ・ヴィジュアル・ライブラリーで講義をしたりするなど、世界的に活躍している先生です。
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