企業の「これで困ってるんです、助けて!」に科学的な「管理技術」で答える片山研究室
生産管理学を研究する片山研究室では、工場など事業所の性能改善技術や国際生産物流システムの設計、生産/業務改善手順の開発と応用、人にやさしい生産システムなどを扱っています。「できなかったことをできるようにする」という、新しい会社や産業を興すのに必須の分野。学部生でも海外の学会で発表するチャンスもあります。
Work
経営がわかる技術者と、技術がわかる経営者を育成
創造理工学部、経営システム工学科。高校生にはちょっとなじみのない分野ですが、どんな人がこの学科を選択しているのでしょうか。片山ゼミ3年生の渡邉さん、4年生の石川さんに高校時代からこの分野を志望していたかと聞いてみると「してませんでした」「まったく」との答え。渡邉さんは、理数系の科目が得意だったものの、数学や物理の基礎科学、工学などの応用科学よりも文系的な分野への興味が強かったことからこの学科を視野に入れたそうです。
片山先生も「この分野は高校の科目にないので受験生はさっぱりわかんないし、進路指導の先生もあんまりわかってくれない」と笑います。「経営っていろんなやり方、オペレーション、ハウツーがあるんですが、どのやり方で結果を出すか考えるのが経営システム工学。で、それを支える人材を育成しているのが経営システム工学科です」。
経営学とはどうちがうのでしょう?「経営をエンジニアリングするんです。できなかったことをできるようにする、具体的に形にできるのが経営システム工学ですね。学生には、経営がわかる技術者、技術がわかる経営者になってほしい。経営だけわかっても、誰に何をやらせればいいのかわからないと効率が悪くなる。やり方だけわかってても、組織のまとめ方がわからないと全体が機能しない。片方じゃダメなんです」。
研究テーマは企業と共同研究のものも多く、企業が提示してくれた今現実に困っていることを、実際のデータを使って解決方法を導き出すのだそうです。石川さんは、工場の工程でネックになっている部分を発見して、それを改善する方法を考える研究をしています。「シミュレーションソフトを使って工場を再現し、『目的追跡法』という手法を使って工程の平準化を図ります」とのことですが、ゲームみたいで成功すると気持ちがよさそうですね!
事業所見学会が年間に何度も学生主体で実施され、工場などの現場を実際に見て研究に活かしています。
工場だけでなく、介護などの分野にも応用
経営システム工学の目的は、組織の問題を解決して目標を達成すること。工場の効率化だけが目的ではありません。ビジネスを回すには「管理」は必ずついてまわるため、どんな分野の会社であっても生産管理の技術は必要であり、応用できるのです。研究テーマには「自動車部品のサプライチェーン構築に関する研究」「配送計画問題における配送センターおよび配送分担の決定に関する研究」「在庫情報収集システムを用いた自動販売機への配送計画方法に関する研究」などに加えて「介護作業の改善と標準化」といった、ヒューマンケアの分野の研究も並びます。
「介護事業は新しいビジネスだから、行き当たりばったりの部分がまだ多いんです。なので生産分野で明らかにしてきた事実を使って、きちっとロジカルにやろうと」ということから取り組みが始まったそうです。介護作業を数値化・標準化することで効率アップを図り、介護業界が抱える問題を解決する糸口となるのです。
このほかにも扱うテーマは多岐にわたります。「割引をすると多くの契約が取れてトータルではもうかる」という「価格弾力性」をスポーツジムの経営に活かして年間のもうけを最大化する、という卒論を書いた学生さんは、自分がアルバイトをしていたスポーツジムからデータをもらって、先生に相談しながら卒論テーマにしたのだとか。まさに生活に密着した、身近な分野の学問だということがよくわかります。
理系分野の社会人として働くには技術を持っていることが求められますが、現場でものを作ったりする技術のほかに、「管理技術」も必要です。人の使い方や組織の動かし方というものも体系立てて開発すべき『技術』で、それを研究し身につける学科なのです。先生曰く「つぶしがきく学科(笑)」。扱う内容が幅広いだけに、渡邉さんは1、2年生のころは自分の専門分野が見えず悩むこともあったそうです。「それでもがんばってインプットしていたら、ある日急に見えてきた感じです。どんな仕事にも生かせるのが経営システム工学のよさなので、今となってはいい選択をしたなと思ってます!」
卒論の発表に向けて、準備も大詰め。レジュメでの表現の仕方、厳しい「ひっかけ質問」が出た場合の心構えなど先生や先輩からアドバイスが飛びます。