「第二言語の習得」を、英語で議論しながら学んでいく 原田ゼミ
言語習得にはどんなプロセスが必要か、効果的な語学習得方法とは何かなど、応用言語学・言語教育の分野の問題を研究するゼミです。卒業後は英語教師になる学生も多いため、英語教育に関わる基礎的な力をつけることを目標としています。具体的なテーマは毎年異なり、2012年は「世界の共通語としての英語」、2013年前期は「第二言語習得の方法」。なお、ゼミはすべて英語で行われ、卒業論文も英語での執筆が原則です。
研究室DATA
原田 哲男 教授(教育学部 英語英文学科)
「英米文学語学演習IF」(第二言語習得とグローバル世界における英語(ELF)の音声教育)
所在地:早稲田キャンパス16号館
Work
新しい理論が次々登場している、「第二言語習得」研究
2013年度の前期は、「第二言語習得」について学んでいる原田ゼミ。「第二言語習得に関する研究は、始まってまだ約50年と歴史は浅いんですよ」と原田先生。ちなみに「第二言語」とは母語(大部分の日本人にとっては日本語)を習得してから学習する言語のこと。日本人の場合は、「第二言語=英語」という人が多いかもしれませんね。
「でも、ここ10年、20年の間で新しい理論や考え方がたくさん出てきています。学生たちには基礎を学ぶとともに、最近の研究に少しでも多く触れて欲しいと考えています」。たとえば、最新の研究では、第二言語の習得には一人ひとりの性格や考え方などが大きく関わっていることがわかってきているそうですよ。
では、実際にある日のゼミの様子を覗いてみましょう。テキストは、第二言語習得理論の入門書『How Languages are Learned(言語はどのように学習されるか)』。まず、しっかり予習してきたかを確認するために、冒頭の15分間は「Quiz(小テスト)」を実施します。次に、その日のプレゼン担当がテキストを自分なりにまとめて発表して、ディスカッションすべき問題を提示。教室内のグループでディスカッションを行ってから、指名された人が意見を発表していきます。
この日取り上げられていた内容は、たとえば正確な文法のフレーズを反復させる学習法のメリット・問題点や、文法に加えてコミュニケーション能力を高めるための複数のやり方、学習者が理解できるものよりも少し高いレベルのものを十分に与えるというインプット理論についてなど。これだけでも、言語習得方法にはさまざまな種類がありそうだということがわかりますね。
それにしても、プレゼンテーションも ディスカッションもすべて英語なのに、誰も臆することなく生き生きと話していたことには驚きです(留学体験者や帰国子女ばかりではありません、念のため)。「実は、一人ひとりの英語力には差があります。でも、自分の限られた英語で一生懸命表現することを続けていると、少しずつ力が付いていくんですよ」(原田先生)。
自分で作ったスライドを単に「読む」のではなく、身振り手振りも交えながら、聞いている人の興味を引くようにプレゼン中。1回目のゼミでは「こんな風にプレゼンを進めて欲しい」と原田先生自らモデルプレゼンテーションをしているそうです。
この日発表した作井伸行さんのテキスト。どこが重要なポイントか、どのようにまとめれば伝わりやすいかなど、テキストをしっかり読み込んでいる様子が伝わってきます。
「英語習得の方法」を、英語で学ぶ意味
ところで原田先生、 そもそもゼミをすべて英語で行うのはなぜですか?
「大学の4年間、通常の英語の授業や 『チュートリアル・イングリッシュ』(早稲田大学で実施されている、英語でのコミュニケーション能力向上のための少人数レッスン)だけでは、英語を実際に使う時間があまりに少ないと思うからです。英語英文学科ですから、学生たちの英語の能力をもっと伸ばしてあげたい。その一方で、大学ですから専門的な研究もしていかないといけません。そこで、簡単ではありませんが『英語で専門分野を学ぶ』という方法を取っているんです」。
その背景には、高校の新学習指導要領もあるのだとか。新しい指導要領では「高校の英語の授業は英語で行う」と指示されています。「ゼミ生には英語の先生を目指す人も少なくないので、今から英語の授業を体験しておくことには非常に意味があると考えています」。もちろん、堂々と英語でディスカッションできることは、先生の道を選ばない学生にとっても大切な財産になりそうです。
さて、ゼミが終わると学生たちは解散・・・ではなく、引き続き学生だけで行う「自主ゼミ」を始めます。自主ゼミの内容はゼミ生たちに任されていて、今年は一人15分の持ち時間で模擬授業を行い、その内容についてみんなで討論などをしているそうです。先生がいない分、通常のゼミより自由な雰囲気ということですが、「自主ゼミにも真面目に取り組んでいて、学んだ結果を通常のゼミや学期ごとに提出するレポートなどに生かせるようにしています」(4年・能見さん)。「ゼミ生はみんな英語が大好きで、あと基本的には真面目な人が多いんです(笑)」(3年・林さん)。
さらに毎週のゼミ以外にも、原田ゼミの活動は盛んです。たとえば、毎年夏の4週間には、希望者を募ってアメリカ・オレゴン州の小学校で「英語を母語とする子供たちに、日本語で理科や算数を教えるプログラム(イマージョン教育)」に参加しています。また、ゼミ旅行も恒例のイベント。「昨年は、学生たちの提案で、韓国の高麗大学の英語の授業を見学したり授業に参加したりしました」(原田先生)。ほかにも、国内の他大学のオープンスクールに参加したり他の学校を見学に行くなどしているそうで、「面白いことをいろいろやっているから、このゼミは楽しいという学生も多いですね」(原田先生)。
この先、社会における英語の必要性が増えることはあっても、減ることはないでしょう。それに伴い、第二言語習得研究の重要性もますます高まっていきそうです。「英語を学ぶにはどんな勉強方法があるのか、それは自分に合っているのか?」、高校生のみなさんもときには自分の勉強法について考えてみるとよいかもしれませんね。
ディスカッションの様子を見ながら、必要に応じてゼミ生に助け舟を出したり突っ込んだりする原田先生。先生が笑顔だから、ゼミ全体も明るく盛り上がります!
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このゼミを目指すキミに先生おすすめの本
英語教師のための第二言語習得論入門
白井恭弘・著(大修館書店)