サッカーでも、自動車でも、スパイでも!? 好きなテーマからドイツを探る「ネットに見る現代ドイツ」
テーマは「ネットに見る現代ドイツ」です。自分が興味を持った話題を掘り下げていくことで、ドイツの今を考え、さらに「モノの見方」「考え方」といった「大学での学び方」を身につけます。しかし、1年生はまだまだドイツ語ができなくて当然。前期は、主に日本語のサイトや資料を使った調査をします。後期には、少し背伸びしてドイツ語サイトの原文にも皆でチャレンジします。
研究室DATA
荒井 訓 教授
「ネットに見る現代ドイツ」(商学部 総合教育科目演習)
所在地:早稲田キャンパス11号館
Work
どんなテーマも勉強につながるどんなテーマもおもしろがる
「ネットに見る現代ドイツ」とは、実際には何を勉強するのでしょうか。そして、この授業のモットー「知的に遊ぶ」とは?
今年受講している3人の学生の中間発表によると、そのテーマは「ドイツのマイスター制度」「ドイツの人名について」「シュタージとスパイ活動」・・・え! スパイ活動!? 荒井先生によれば「選んではいけないテーマはない」とのこと。ドイツに関係することで興味のあることなら何でもOKなのだそうです。そして、テーマを決めたり、調査をスタートするために活用しているのがインターネット。本格的な論文などでは根拠にはできない「ウィキペディア」だってここでは使っていいそう。まずは気軽に、自分がおもしろがれるツボを探すってことですね。
例えば去年はドイツのプロサッカーについて調べた学生もいたそうです。で、ここから、このゼミならではの流れが始まります。
「ドイツのブンデスリーガに外国人選手はどれくらいいるのだろう?」
↓
「各チームのサイトで外国人登録選手の数と出身地をチェック」
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「日本では外国人選手の数が制限されているのに対して、ドイツでは『少なくとも12名のドイツ国籍をもつ選手と契約しなければならない』と決められていることが判明」
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「なぜならドイツでは外国人がいるのが大前提だから」
↓
「背景に移民問題あり」
と、最後には、ドイツの社会問題を調べることになったのです。
ひとつわかると、次の疑問がわいてきて、また次の調査が始まる、という繰り返しがこのゼミならではの授業の流れ。しかも、この流れに乗っていくと、どんどん脳みそが気持ちよくなるのです。あ! この快感こそが「おもしろい」ってことなんじゃないんですか! 「そう。『知的に遊ぶ』というのは、ただ知識を増やすことではありません。もちろん調査の道順はちゃんとサポートするし、知識や情報のつながりを一緒に見つけていくことなんです」と荒井先生。確かに、中間発表の間も、「このテーマ、おもしろいねー」「ここからもっとデータを集めるとおもしろくなってくるよ」と、とにかく先生は「おもしろいっ!」と連発しているのです。こちらにもあっという間にその空気が伝染してくる感じです。
ひとり1台のパソコンを使った授業。先生は学生のパソコンを覗きこみながら、「読めないドイツ語があったら、その場で聞いてくれたらいいから」とサポートしてくれます。
中間発表の様子。荒井先生は発表するときの話し方やシートの作り方のアドバイスも。そして、ビジネスの現場で必須のパソコンソフト「パワーポイント」の使い方も覚えていきます。最終発表までにはビジュアルもたくさん盛り込んだシートに仕上げるそう。
アニキみたいな、チームメイトみたいな先生の魅力にひきこまれる
さて、この日は、このゼミのOB・滝澤さん(4年生)も顔を出してくれました。1年生のドイツ語の授業で荒井先生に出会い、「ドイツ語というより、先生に興味がわいたんです。先生の雑談がおもしろくて! こんなふうに多面的に物事を見られる人になりたい」とすっかり荒井先生に惚れこんでしまったのだとか。「2年生のときは時間割の都合で、このゼミは履修できなかったんです。でもあきらめきれなくて、先生にお願いして去年ようやく参加できました」。
1年間の流れを滝澤さんが教えてくれました。まず前期は、興味のあることをそれぞれ調査。これは日本語の参考資料やサイトを使えばよいので、ドイツ語のサイトばかりをみているわけではないとのこと。滝澤さんの場合は、「メルセデス・ベンツとトヨタの違い」を調査のテーマにしたそうです。「クルマが好きなので」。その大好きなクルマの話から調査内容は環境問題へ発展。「後期は、ドイツの新聞サイトを題材にして、クルマに限らず、記事でとりあげられている環境問題を読んでいきました」。というように、後期になると、ドイツ語を使って読んだり調べたりするそうです。
「僕たちのときは、後期の題材がちょっと難しかったんじゃないかな」と滝澤さん。すると荒井先生は「それをキミたちがやりたいって言うから。自分たちで選んだんだよ」。そんな話をしているおふたりの表情は完全に笑顔。充実した試合を終えたあとのチームメイトのような雰囲気です。
ところで、「商学部でなぜこういう授業なの?」という疑問もあったのですが、その答えのひとつがわかった気がします。商学部を卒業すると、多くの人がビジネスの現場に入っていきます。そこではいろんな問題や課題があるでしょう。例えば、開発途中の商品に問題が起こったとか、大ヒット商品が生まれないとか、社内の人間関係をよくしていきたいとか・・・。そのどれをとっても、「物を見る力」「考える力」そして「おもしろがれる力」があれば乗り越えられるんじゃないか、っていうこと。そして、ビジネスに限らず、人が生きていくときに、とても大事な力になる。このゼミで身につけているのは、そんな、「社会を生きていくための力」でもあるんですね。
後期になるとドイツ語に本格的に触れるので、予習も必要になってきます。「ノートの書き方は荒井先生に教わった方式です」(滝澤さん)。
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